NO.121 H17年4月20日号
創造性を育むにはまず「詰め込み」

●鶏肉とトマトのスープ
 大きめの鍋に、キャベツ、玉葱、人参、トマト、鶏肉を一口大に切って入れ、その上に固形コンソメを一つか二つのせ、弱火から中火でことこと煮込みます。すると水を入れなくても野菜からたくさんのスープが出てきます。最後に塩コショウで味を調えれば、私にとってのお袋の味、鶏肉とトマトのスープができあがります。

●食材あっての創造性
 学生時代、一人暮らしをはじめた私は、記憶を探りながらこの料理を作りました。何度も失敗を繰り返しながらも改良を重ね、鶏肉をこんがり焼いてから入れてみたり、ジャガイモを入れてみたり、ベーコンや大豆を入れてみたり、より美味しくなるよう工夫をこらしました。
 男子厨房に立つべからずなどとも言われますが、男の身にも料理は楽しいものです。なぜなら、料理は創造性に満ちているからです。材料にも調理法にも、「定石」はあっても「ルール」はありません。鍋には何を入れるのも自由なのです。
 しかしもし、冷蔵庫に何も入っていなかったらどうでしょう? 食材が何もなかったら、いったいどうやって創造力を働かせればよいのでしょうか。

●頭のご馳走
 知識と創造力は、まさに食材と料理の関係にあります。知識だけがいくらあっても、食材を生のまま食べるようなもので、あまり役には立ちません。しかし最低限の知識がなければ、そもそも創造のしようがありません。
 もちろん、よい食材……つまり知識を手に入れるのは、簡単なことではありません。ご馳走という言葉は、あちこち走りまわって食材を調達することから生まれたそうです。しかしその苦労があればこそ、美味しい料理も作れるというものです。
 あとで美味しい思いをするために、頭の冷蔵庫に知識を詰め込んでみませんか?

教務主任 杉本慎悟