NO.122 H17年5月20日号
「なんで勉強しなきゃいけないの?」

●「なんで勉強しなきゃいけないの?」
 ときどき、生徒さんからこんな質問をされることがあります。保護者のみなさまも、一度や二度は経験があるのではないでしょうか。
 思春期の少年少女にありがちな紋切り型の疑問……といえば聞こえは悪いですが、裏をかえせば、それだけ誰もが思い悩むことだ、とも言えます。当然わたしたちも昔同じようなことを考えたはずなのに、いざ、答えを口で説明するとなると……いやはや、なかなか難しい。
 もっとも、こんな疑問を口にするのは十中八九、生徒さんが勉強に疲れて甘ったれている時です。あんまりまじめに取りあって、保護者のみなさまが一緒になって悩んだりしようものなら、生徒さんの甘ったれを助長するだけ。実際に問いかけられた時には、軽く受けとってから、「話はわかった。ごはん食べて寝なさい!」とでも返すのがオススメです。
 わたしがこんなことを言うのは、釈迦に説法というものですが。

●世のため人のため
 さて、そうは言っても疑問の答えは気になります。これは言ってみれば、勉強の動機がどこからくるのか、という疑問ですから、その答えを見つけることは、生徒さんを導くうえで欠かせないことであろう、と思うのです。
 かつて「人間はポリス的動物である」と言ったのは、ギリシアの哲学者アリストテレスです。人間がする仕事は、ポリス(社会)に役立つようになされたとき、はじめて意味を持つ。彼はそう考えたのです。
 彼は二千三百年以上も昔の人物ですが、この考え方は現代にも通じるように思います。どんなにすばらしい能力を持っていても、それを世のため人のために役立てなければ、宝の持ち腐れではないでしょうか。

●思いやりの心
 そしてまた、人間はなかなか自分自身のためには働けない、なまけものでもあります。仕事をサボろうが辞めようが、自分にしか迷惑がかからないなら、「まあいいか」となまけてしまう。他の誰かに迷惑がかかったり、他の誰かが喜んでくれるからこそ、そこで気合いを入れなおし「がんばろう!」と立ち上がることもできるというもの。
 人間を突き動かしているのは、そういう気持ち。親を思う気持ち、子を思う気持ち、友を思う気持ち、他人を思う気持ち……思いやりの心です。
 生徒さんの勉強についても、同じことが言えるでしょう。「将来自分の役に立つんだから勉強しなさい」と言われたってピンときません。でも、「将来人の役に立つことができるから」だったらどうでしょう。それでもピンとこなければ、「あなたが満点とってくれたら、お母さんうれしいわ」だったら?
 記事のアンケートにある、「郷土と国愛する心」とは、まさにこうした思いやりの心のことと言えるでしょう。人の役に立つことが、人が喜んでくれることが、自分にとってもうれしい。そう思える優しい心を育むことが、ひょっとしたら成績を上げるための一番の近道なのかもしれません。

教務主任 杉本慎悟