NO.123 H17年7月18日号
知識があってこそ身につく「生きる力」

〜早急なる知識教育への転換を

 最近の脳科学の発達や認知心理学などの研究からも、多くの知識がなければ、知識をもとに推論へと発展させる問題解決能力、「生きる力」は身につかないことがわかっています。問題解決能力をつけるには、多くの知識を脳に記憶させ、必要に応じて知識を組み合わせ、出力することが必要です。そのためには知識を忘れないための反復練習や、多くの課題に多大な時間をかけて演習しなければなりません。

●知恵の窓口は多くの知識
 また、子どもたちは知識が多いほど物事に興味や関心を持つ機会は多く、興味や関心がある知識ほどいつまで経っても忘れませんが、関心のない単純知識は忘れやすいのです。しかし、その単純知識でもその時はよく理解していなくても一度聞いた知識は後で聞くと、初回の時よりは興味や関心があるものです。しかも、その時役に立たないと思った単純知識が、後にその知識やその知識に関連して得た新しい知識が非常に役に立つことは多々あります。
 つまり、子どもたちにとって将来どのような知識が役に立つかを予測することは不可能に近いことなのです。従って、子ども時代には出来るだけ多くの知識を吸収させること、負荷を与えてしっかり考えさせることもまた大切な教育であることを認識し、「詰め込み教育は悪」等と切って捨てるような教育行政は慎まなければなりません。

●真の教育改革へ
 実際の教育現場でも、すでに総合的学習の時間をほかの主要教科に振り替えている学校も少なくありません。PISAやIEA(国際教育到達度評価学会)の結果からも学力低下が明白になりましたが、もし、児童・生徒が塾に通わず学校だけの勉強だったらもっと悲惨な結果となったことでしょう。この程度の学力低下で済んでいるのは、塾や予備校による徹底した知識重視教育が寄与していることを認識し、早急なる真の教育改革に取り組んで欲しいものです。