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H27-4-1 ロス近郊グレンデール市在住日本人、朝日新聞の記事で
いじめを受けたと朝日新聞を民事告訴 担当 徳永信一弁護士


請求の原因
  【目次】  
        
第1 当事者 …… p2  
   1 原告ら …… p2  
   2 被告 …… p2  
  第2 慰安婦報道における朝日新聞の誤報記事 …… p3  
   1 2014年8月5日付検証記事と朝日新聞の謝罪 …… p3
2 吉田証言関連記事 …… p3   
   3 挺身隊混同記事 …… p3   
   4 1997年3月31日付検証記事 …… p4   
   5 2014年12月22日第三者検証記事 …… p  
  第3 誤った国際世論の形成 …… p      
   1 1992年1月11日付朝日新聞記事 …… p  
   2 韓国世論の沸騰 …… p  
   3 欧米系メディアの報道 …… p  
4 河野談話 …… p  
   5 クマラスワミ報告 …… p8 
   6 マクドゥーガル報告 …… p12  
7 国連委員会勧告 …… p14 
   8 米下院決議121号 …… p15 
   9 慰安婦の碑・慰安婦像の設置 …… p16
   10 米高校教科書における慰安婦記述の登場 …… p17
  第4 被告の法的責任 …… p18   
   1 倫理綱領 …… p18         
   2 報道による不法行為 …… p18      
   3 真実報道義務と訂正義務 …… p19    
   4 朝日新聞の訂正義務違反等 …… p20 
   5 クマラスワミ報告との因果関係 ……     
  第5 原告らの損害 …… p23 
   1 原告ら日本人が蒙った二重の名誉毀損の損害 …… p23 
   2 グレンデール市近隣住民である原告らの損害 …… p24
3 名誉回復のために必要な米紙等への謝罪広告 …… p29  
  第6 まとめ …… p30  


第1 当事者   
1 原告ら          
 ? 原告らは、いずれも日本人としてのアイデンティティと歴史の真実を大切にし、これを自らの人格的尊厳の中心において生きている日本国内外に居住している日本人である。 
 ? 原告馬場信浩(以下「原告馬場」という。)、原告今森貞夫(以下「原告今森」という。)及び原告林竜禅(以下「原告林」という。)は、米国カルフォルニア州ロサンゼルス郡グレンデール市近隣に居住している日本人である。  
 2 被告       
被告は、全国紙朝日新聞を発行する新聞社である。日本のクオリティー・ペーパーを自称しており、その販売部数については、2012年上半期、約767万部、夕刊約285万部との調査がある。 
被告は、「朝日新聞」発行の他に、「朝日新聞縮刷版」、「朝日新聞デジタル版」を発行・発信している。
被告は、1954年から英字夕刊紙「朝日イブニングニュース」を発行してきたが、2001年の廃刊と同時に「ヘラルド朝日」を創刊し、2011年に英字新聞事業から撤退するまでその編集発行に携わり、現在も米高級紙ニューヨーク・タイムズと提携関係を結んでいる。  
                   
第2 慰安婦報道における朝日新聞の誤報記事   
 1 2014年8月5日付検証記事と朝日新聞の謝罪   
   被告は、2014年8月5日付朝日新聞朝刊で、日本統治下の朝鮮・済州島で軍命によって慰安婦を強制連行したとする吉田清治の証言(以下「吉田証言」という。)を虚偽だと判断し、その証言を報じた記事を取り消すと表明する検証記事を掲載した。  
同検証記事は、更に、朝鮮半島出身の慰安婦について「朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した」と書いていた1992年1月11日付記事などに、「挺身隊」を「慰安婦」と混同する誤用があったことを認めた。           
ただし、同検証記事は、慰安婦問題の本質は、慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことの立場を表明するものであり、強制連行そのものを明確に否定したものではなかったが、轟然たる世論の批判を浴びるなか、2014年9月11日の謝罪会見において木村社長は訂正が遅れたことを謝罪し、杉浦編集委員は強制連行がなかったことを認めた。   
 2 吉田証言関連記事   
   朝日新聞が軍命による慰安婦狩りを告白した吉田証言を事実として報道した記事は、1982年9月2日付記事をはじめ、別紙「吉田証言記事一覧」記載のとおり、未だ取り消されていない記事を含め全部で19本あることが確認されている。   
 3 挺身隊混同記事  
   朝日新聞が戦時下で女性を軍需工場などに動員した女子勤労挺身隊を指す「挺身隊」を、これと全く別の「慰安婦」と混同し、戦時下の日本軍と政府による組織的な強制連行があったとの誤解を招いていた記事は、前記1992年1月11日付記事をはじめ、別紙「挺身隊混同記事一覧」記載のとおり、 データベース上で訂正の断り書きがないものを含め全部で33本あることが確認されている。  
 4 1997年3月31日付検証記事  
   朝日新聞は、2014年検証記事に先立つ1997年3月31日、従軍慰安婦問題取材班によるそれまでの慰安婦報道に関する総括的な検証記事を掲載していた。
しかし、そこでは吉田清治証言に関しては、「吉田清治氏は83年に、『軍の命令により朝鮮・済州島で慰安婦狩りを行い、女性205人を無理やり連行した』とする本を出版していた。慰安婦訴訟をきっかけに再び注目を集め、朝日新聞などいくつかのメディアに登場したが、間もなく、この証言を疑問視する声が上がった。済州島の人たちからも、氏の著述を裏付ける証言は出ておらず、真偽は確認できない。」などとするに止まり、あえて虚偽であることを表明せず、訂正も取消しも行わなかった 。     
そして、国内外の読者に対し、軍と政府による組織的な強制連行の印象を撒き散らすことになっていた「挺身隊」と「慰安婦」の混同による誤用については、既に多くの読者や研究者から間違いの指摘がなされていたにもかかわらず、これに全く言及しないまま放置した。       
5 12月22日第三者委員会報告(慰安婦問題の本質と残された問題)  
  謝罪会見では強制連行がなかったことを認めて謝罪した。 更に、朝日新聞が組織した第三者委員会は12月22日「     」との報告を公表し、朝日新聞はこれを重大なこととして受け止めた。  
  国際世論に与えた影響については、「     」ものの「限定的である」とされ、委員相互の意見が割れていた。未解決の問題である。 
            
第3 誤った国際世論の形成   
 1 1992年1月11日付朝日新聞記事   
慰安婦問題が海外でも大々的に取り上げられ、日韓の外交課題に急浮上するきっかけになったのは、1992年1月11日に朝日が報じた「慰安所 軍関与示す資料」という記事だった。政府は当時、「民間業者が連れ歩いていた」として国の関与を認めていなかったため、それを覆す文書とされた。しかし、「国の関与」とはいっても、それは日本国内での慰安婦募集に関して「業者がトラブルを起こすので配慮せよ」というものに過ぎず、朝鮮人慰安婦の強制連行とは全く無関係なものであった。
さらに「従軍慰安婦」の説明として「太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」と記述したため、朝鮮人慰安婦が「挺身隊」という公的制度によって組織的に強制連行されたとの印象を強く与えたうえ、20万人という根拠のない数字が一人歩きする発端となった。そして吉田証言は、このストーリーを具体的に裏付けるものと位置づけられた。    
 2 韓国世論の沸騰  
朝日報道をきっかけに、韓国各紙は慰安婦問題を集中的に報道し、韓国世論を憤激させた。1992年1月16日東亜日報では「(12、13歳前後で)勤労挺身隊として連行されていった幼い少女たちの一部はその後従軍慰安婦として再度差し出された」と報じ、同月18日朝鮮日報では「    」と報じた。    
国内世論の沸騰を受けて韓国政府は1992年7月31日、「日帝下の軍隊慰安婦の実態調査中間報告書」を公表した。同報告書には「1943年ころから(中略)19世紀のアフリカでの黒人奴隷狩りのような手法の人狩りで慰安婦を充員することになった。吉田清治氏はその著書の第2章でそうした状況について証言している」との記述がある。朝鮮日報は吉田証言が真実であることを前提にしたものだった。   
報告書について韓国紙は「婦女子狩り」(朝鮮日報)「ドレイ狩り」(東亜日報)など、大見出しで吉田証言を強調した報道をしている。韓国国民は政府公認の解釈として慰安婦=強制連行を常識とするに至った。     
3 欧米系メディアの報道       
欧米系のメディアも吉田証言を報じた。AP通信は1992年6月、吉田清治について「第二次世界大戦中に韓国の村々から日本兵に繰り返しレイプされる女性の組織的な拉致に関与したことを告白した唯一の日本人」と紹介。「ガス室を操作するナチスの当局者のようだった」という回想も取り上げ、世界に配信した。   
1992年8月8日の米紙ニューヨーク・タイムズは、吉田清治が約2000人の女性を捕らえたという話と「それはまさに誘拐のようでした。今世紀のアジアにおける最悪の人権侵害ではないでしょうか」という本人のコメントを掲載した。   
1992年9月13日の英紙ガーディアンは吉田清治の証言を紹介し、「1943〜44年の間、吉田氏は官憲を率いて朝鮮を歩き回り18〜35歳の朝鮮人女性を奉仕隊として集め、中国に送り込んだ。『我々は村ごとに1〜10人の少女をさらった。それはある意味誘拐だ』と吉田氏は認めた。彼はこの方法でほぼ2000人を狩り集めた。『なぜ私は逮捕され、裁かれなかったのか』。老いた吉田氏は問いかけている」と報じた。  
1993年8月5日の米紙ロサンゼルス・タイムズは、「業者は当初、ウソの仕事名で女性たちを誘っていたが、そのうちの一人である吉田清治氏によれば、43年当初、女性たちはもはや勧誘に引っかからなくなり、慰安婦狩りを始めたという。女性らは誘拐され、最前線に送られた。逃げようとすれば、焼けた鉄で拷問された。多くの女性が自殺に追い込まれ、その他も軍が撤退するときに殺されたり放置されて死亡したと伝えられている」と報じた。 
米国NBCテレビは1993年8月、「慰安婦にふさわしい若い健康な女性を連行した。それは事実上の奴隷狩りだった」という吉田清治のインタビューを放映した。    
何らの裏付けもない吉田清治の慰安婦狩り証言が、欧米で事実として紹介され、軍による組織的な犯罪だと報道されたのは、朝日新聞が吉田証言を繰り返し取り上げて信用性を賦与し、箔付けしていたためである。朝日新聞が、速やかに、自らそれが虚構であったことを公表し、これを掲載した記事を取り消していれば、吉田証言を事実として取り上げる報道がなされることもなく、世界に誤解が拡散することもなかっただろう。 
 4 河野談話  
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5 クマラスワミ報告  
  ? 概要  
クマラスワミ報告とは、国連人権委員会が1994年に任命した「女性に対する暴力、その原因と結果に対する特別報告者」であるラディカ・クマラスワミ(スリランカの女性法律家)がまとめた一連の文書を指す。 
問題視されているのは、1996年1月に提出された第1附属文書「戦時における軍の性奴隷制度問題に関して、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査に基づく報告書」(以下、「クマラスワミ性奴隷報告」という。)である。それは慰安婦制度が国際法に違反する「性奴隷制」であると断定し、日本政府に対し、法的責任を受入れ、被害者に賠償を行い、責任者を処罰するよう勧告した。  
クマラスワミ性奴隷報告については、1996年4月国連人権委員会で作業を「歓迎」し、内容に「留意」するという決議がなされている。 
  ? 挺身隊と慰安婦の混同  
クマラスワミ性奴隷報告は、第U章「歴史的背景」において「表向きは日本軍を助けるため工場で働いたり、その他の戦争関連の任務を遂行する女性を徴用するという目的で女子挺身隊が設立された。だが、これを口実に、多くの女性が騙されて軍の性奴隷として働かされることになり、挺身隊と売春の関連はすぐに広く知られるようになった。」「さらに沢山の女性を集めるために、軍に協力する民間業者や、日本に協力する朝鮮人警察官が村を訪れ、いい仕事があるといって少女たちを騙した。さもなければ、1942年までは、朝鮮人警察官が村へやってきて『女子挺身隊』を募集した。これによって日本政府が認める公式の手続きになると同時に、ある程度強制力を持ったのである。『挺身隊』に推薦された少女が出頭しない場合は、憲兵隊ないし軍警察がその理由を調査した。実際、『女子挺身隊』によって日本軍は、地元の朝鮮人業者や警察官を利用して、地元の少女にウソの口実の下に『戦争協力』するよう圧力をかけた」などとし、挺身隊制度により慰安婦が募集されていたとしており、朝日新聞誤報と同じく挺身隊と慰安婦を混同する誤謬に基づいている。  
なお、日本国内の研究において、国家総動員法による「慰安婦」の動員がなかったことが証明されている。 
? 吉田証言の引用    
    報告書の第U章「歴史的背景」では、「強制連行を行った一人である吉田清治は戦時中の体験を書いた中で、国家総動員法の一部である国民勤労報告会の下で、他の朝鮮人とともに、1000人もの女性を『慰安婦』として連行した奴隷狩りに加わっていたことを告白している。」として吉田証言を引用している。  
? ヒックスの著書からの引用       
  吉田証言引用の前段には、「それ以上にまだ女性が必要とされた場合は、日本軍は暴力的であからさまな力の行使や襲撃に訴え、娘を誘拐されまいと抵抗する家族を殺害することもあった。こうしたやり方は国家総動員法の強化でさらに促進された。1938年に成立したこの法律は、1942年以降はもっぱら朝鮮人の強制連行のために使われたのである。」との記載がある。    
これはオーストラリア人ジャーナリスト、ジョージ・ヒックスの著書『性の奴隷 従軍慰安婦』から引用されたものであるが、同書は吉田証言に依拠したものであった。        
  ? 元慰安婦証言の軽信   
クマラスワミ報告は、北朝鮮の元慰安婦チョン・オクスンをはじめ5人の元慰安婦の証言を掲載し、事実認定の基礎としている。それらの証言内容は、いずれも裏付けがなく、正確性を欠く不合理なものであり、俄かに措信しがたいものばかりである。 
例えば、チョン・オクソンの証言は次のようなものである。  
「当時13歳だった私は畑で働く両親のために昼食を用意するため、村の井戸に水くみに行きました。そこで日本人の守備兵の一人に襲われ、連れて行かれたのです。」「10日ほどして、恵山市の日本陸軍の守備隊に連れて行かれました。そこには私のような朝鮮人の女の子が400人くらいいて、毎日、5000人を超える日本兵のため性奴隷として働かされました。」「私たちと一緒にいた朝鮮人の少女の一人が、なぜ1日に40人も相手をしなければならないかと聞いたことがあります。彼女を懲らしめるために、中隊長ヤマモトは剣で打てと命じました。私たちの目の前で彼女を裸にして手足を縛り、釘の出た板の上にころがし、釘が彼女の血や肉片でおおわれるまでやめませんでした。最後に、彼女の首を切り落としました。もう一人の日本人ヤマモトは私たちに向かって、『お前らを全員殺すのなんかわけはない。犬を殺すより簡単だ』と言いました。『朝鮮人の女たちが泣いているのは食べるものがないからだ。この人間の肉を煮て食べさせてやれ』とも言いました。」     
ところが、クマラスワミは、こうした一方的で正確性に欠ける証言を裏付けのないまま軽信し、これらの証言によって「軍性奴隷制が日本帝国陸軍の指導部により、また指導部の承知の上で、組織的かつ強制的に行われたと信じるに至った」としている。         
  ? 朝日新聞誤報の影響について   
    クマラスワミ性奴隷報告が慰安婦狩りを虚構した吉田証言に箔を付け、挺身隊を慰安婦と混同した朝日新聞誤報の影響下に生まれたものであることは明らかである。菅義偉官房長官は2014年9月5日、「クマラスワミ報告は朝日新聞が取り消した記事内容の影響を受けている」との見方を示している。   
クマラスワミ性奴隷報告が上程された1996年1月以前から、被告はかつての朝日の慰安婦報道における吉田証言の虚偽性と挺身隊の誤用を自覚していたと思われ、報告書の瑕疵も知っていたと思われる。速やかに誤報を認め、訂正ないし取り消して内外に公表していれば、クマラスワミ性奴隷報告が、こうした一方的なものにならなかったはずである。   
しかし、1996年2月6日付朝日新聞夕刊は1面でクマラスワミ性奴隷報告の内容を報じ、社会面に「人権委報告に元慰安婦ら『政府は勧告に従って』」との見出を掲げた記事を掲載し、1996年4月21日付朝日朝刊は、「国家補償の実現求める 学者ら160人以上が声明」と題し、「報告書が認められた以上は国家補償を実現させる土台ができたことになる」とする武者小路公秀教授の見解を紹介している。いずれも、報告書を一方的に礼賛するものであり、その虚構性を覆い隠す役割を担うことになった。  
 6 マクドゥーガル報告   
? 概要         
マクドゥーガル報告とは、戦時における女性に対する暴力に関する特別報告者に任命されたゲイ・マクドゥーガル(米国の女性法律家)が作成し、1998年6月22日に国連人権委員会差別防止・少数者保護小委員会に提出された「武力紛争下の組織的強姦・性奴隷制および奴隷制類似慣行に関する最終報告書」のことである。
日本の慰安婦問題については附属文書「第二次世界大戦時に設けられた『慰安所』に関する日本政府の法的責任に関する分析」(以下「マクドゥーガル慰安所報告」という。)において取り上げられ、同年8月21日に同委員会で「歓迎」という形で決議されている。  
マクドゥーガル慰安所報告は、クマラスワミ性奴隷報告の論調を引き継ぎながらも、慰安婦の制度は「奴隷制」だと決めつけ、慰安所は「レイプセンター」であり、性奴隷の被害者は20万人以上だと断定し、より過激でグロテスクなものとなっている。日本政府を名指しして非難し、国連人権高等弁務官と協力して「特別立法により、レイプセンターの責任者、利用者を探し出して逮捕し、かつ元慰安婦への法的賠償を履行する機関を設置する」よう勧告している。    
? 報告内容    
マクドゥーガル慰安所報告における慰安婦制度の報告は次のようなものである。     
「1932年から第二次世界大戦が終わるまで、日本政府と日本帝国陸軍は20万人以上のアジア女性を強制的にアジア各地のレイプセンターの性奴隷とした。」「これらのセンターで日本軍によって奴隷化された女性たちの多くは、11歳から20歳であったが、この女性たちは日本支配下のアジア全域の指定地区に収容され、毎日数回強制的にレイプされ、厳しい肉体的虐待にさらされ、性病をうつされたのである。こうした連日の虐待を生き延びた女性はわずか25%にすぎないと言われる。『慰安婦』を確保するために、日本軍は身体的暴力、誘拐、強制、詐欺的手段を用いた。」  
「こうした『慰安所』内に意思に反して拘束された女性や子どもたちは、そこで大々的規模のレイプや性病にさらされたのであり、この犯罪の性質を適切に述べるとすれば人道に対する罪としか言いようがないだろう。」    
? 朝日慰安婦報道の影響等      
  マクドゥーガル慰安所報告が認定している事実は、クマラスワミ性奴隷報告が下敷きになっている。ゆえに、同報告における誤謬(吉田証言の引用と挺身隊との混同)に基づく虚構、すなわち、慰安婦募集における詐欺的勧誘、誘拐、人狩り等の強制連行の誤解と偏見に基づくものとなっている。被告が速やかに、遅くとも1997年3月30日の朝日新聞検証記事において、これらの間違いを認め、訂正ないし取り消しを行い、国内外で公表しておれば、かように一方的な文書が国連に提出されることはなかったはずである。  
  ところで、同報告は、他にも数多の疑問が投げかけられている。例えば、
中央大学教授の吉見義明は、マクドゥーガルが政府調査に基づくと報告した中で実際に政府資料にない箇所を、本人を前に指摘したところ、彼女が無視したことなどを理由に、その学術的姿勢に疑問を呈している。また、アジア女性基金がまとめた「『慰安婦』問題とアジア女性基金」によれば、慰安所を等しく強姦所と呼び、慰安婦20万人のうち14万人以上の朝鮮人慰安婦が死亡したという内容は、全く根拠がなく、その原因は荒船清十郎代議士の根拠の無い放言にあるという。広く行き渡った吉田証言による誤解と偏見を原因として誤った証拠選択がなされた典型である。  
7 国連委員会勧告     
   クマラスワミ、マクドゥーガル両報告書の内容は、日本軍が性奴隷として強制連行したとの風説となって世界に広がった。クマラスワミ性奴隷報告や吉田証言は、現在に至るまで国連の人権関係の各種委員会で、日本を批判するベースとなっている。     
女性差別撤廃委員会は、1994年と2003年に「従軍慰安婦」問題を最終的に解決するための方策を見出す努力を行うことなどを勧告し、2009年には「被害者への補償、加害者の訴追及びこれらの犯罪に関する一般国民に対する教育」を求める最終意見を出している。 
自由権規約委員は、2008年に「慰安婦」制度について法的責任を受け入れ、被害者に謝罪し、加害者を訴追し、生存被害者への補償処置をとり、生徒および一般公衆を教育し、この事件を否定するいかなる企てをも反駁し制裁すべきであるなどとする強力な勧告を行い、2014年には、こられに加え、「教科書への十分な記述を含む、この問題に対する生徒・学生と一般市民の教育」等を求める勧告がなされた。     
社会権規約(経済・社会・文化的権利)委員会では、2001年に「慰安婦」を代表する組織との間で、犠牲者の期待に添う補償方法について協議するよう勧告し、2013年には、「慰安婦」が経済的、社会的及び文化的権利の享受を保障するためのあらゆる必要な措置をとることに加え、「彼女らをおとしめるヘイトスピーチ及びその他の示威運動を防止するために、『慰安婦』が被った搾取について公衆を教育すること」を勧告している。  
拷問禁止委員会においても、2007年に日本政府の被害者への救済が不十分であることや有効な教育その他の対策を怠っていることを非難し、2013年の最終意見書においては、戦時性奴隷制について、政府関係者その他の公的立場にある人物による被害事実を否定する動きに反駁することや、史実の教育等の措置を取るよう求めている。 
8 米下院決議121号    
   2007年1月、米下院外交委員会に慰安婦問題について日本政府に謝罪を求める決議案が提出され、7月30日に本会議で可決された(以下、これを「米下院決議121号」という)。続いてカナダ、EU、オランダ、オーストラリアなど世界各地の国、地方レベルで採択されている。   
米下院決議121号は、慰安婦制度を「強制軍事売春」とした上で、「その残酷さと規模において前例を見ないものとされるものであるが、集団強姦、強制中絶、屈従、またやがて身体切除、死や結果的自殺に至る性暴力を含む、20世紀における最大の人身売買事件の一つであり」「日本の公人私人が最近になって、『慰安婦』の苦労に対し、日本政府の真摯な謝罪と後悔を表明した1993年の河野洋平内閣官房長官の『慰安婦』に関する声明を、弱めあるいは撤回する欲求を表明しており」などと激しい表現で日本を批判し、日本政府に対し、「世界に『慰安婦』として知られるようになった若い女性たちに対し日本軍が性奴隷制を強制したことに対し、明瞭かつあいまいさをとどめない形で公的に認め、謝罪し、歴史的責任を受け入れるべきである。」「日本政府は、現在および未来の世代に対し、この恐るべき犯罪について教育し、『慰安婦』に関わる国際社会の数々の勧告に従うべきである。」などと勧告した。 
この決議案は、クマラスワミ性奴隷報告の事実認定を基にしており、議員説明用の資料には途中段階で吉田清治の著書が用いられていた。朝日新聞がその慰安婦誤報について速やかな訂正と謝罪を公表し、その拡散と定着を阻止していたら、こうした誤解と偏見に基づく不当な決議が採択されることはなかったであろう。   
 9 慰安婦の碑・慰安婦像の設置   
米下院決議121号可決後、全米各地で韓国系住民団体の働きかけによる慰安婦の碑や慰安婦像などの設置が相次いでいる。韓国系団体幹部は、ことあるごとに、この決議を持ち出す。客観的な資料が少ない慰安婦問題において、米議会の決議は、最大の根拠となっている。    
2010年10月、ニュージャージー州パリセイズパーク市に慰安婦の碑が設置された。碑文には「日本帝国の軍により拉致された20万人以上の女性と少女のために」と刻まれている。
続いて、2012年6月には、ニューヨーク州ナッソー郡のアイゼンハワー公園内の退役軍人記念園に、2012年12月には、カリフォルニア州オレンジ郡ガーデングローブ市のショッピングモール前に、2013年3月にはニュージャージー州バーゲン郡ハッケンサック市の裁判所の脇にそれぞれ同様の慰安婦の碑が設置された。
そして2013年7月、カリフォルニア州グレンデール市の公園に慰安婦を象徴する少女の像が設置され、その傍ら埋め込まれた碑文には、日本軍により、20万人以上の女性が家々から引き離され、性奴隷を強制されたと記されている。  
その後も2014年5月、バージニア州フェアファックス郡の郡庁舎の敷地に慰安婦の碑が設置された。2014年8月には、ニュージャージー州ハドソン郡ユニオンシティの市営公園に、慰安婦の碑が、ミシガン州デトロイト市の韓国人文化会館前庭に、慰安婦像が設置された。
同じく2014年8月には、カリフォルニア州オレンジ郡フラトーン市の博物館に慰安婦像を設置する議案が市議会で承認されている。   
これらの慰安婦の碑や慰安婦像の多くは、日本軍による「20万人」以上の女性を「強制連行」して「性奴隷」にしたことを碑文に刻んでいる。朝日新聞の慰安婦誤報の影響の大きさとその罪深さを思わずにはおれない。
 10 米高校教科書における慰安婦記述の登場  
米カリフォルニア州ロサンゼルス市や同市近郊の公立高校で使用されている世界史の教科書『伝統と交流』(米大手教育出版社マグロウヒル発行)には、先の大戦を扱った章で「日本軍は14〜20歳の約20万人の女性を慰安所で働かせるために強制的に募集、徴用した」など、募集段階の強制連行があったかのように記述されている。 
こうした教科書に掲載された記述もまた、挺身隊と慰安婦との混同に基づく誤解によるものであることは明らかであり、被告が朝日新聞紙上で速やかに誤報を正していれば避けられた間違いであった。  
            
第4 被告の法的責任
 1 倫理綱領      
朝日新聞が加盟している日本新聞協会の倫理綱領には、「新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追及である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。」とあり、朝日新聞綱領は、「真実を公正敏速に報道し、評論は進歩的精神を持してその中正を期す。」としている。     
 2 報道による不法行為     
民主社会において新聞やテレビといったマスメディアが有する情報コントロールの力には絶大なものがある。ひとたび、虚偽または不適切な報道がなされた場合、それは真実のものとして一般読者に受け取られて流布されるに至り、当該報道の対象となり、或いは対象となった事実に関係する特定人ないし不特定多数に取り返しのつかない被害を発生させるおそれがある 。
朝日新聞はわが国有数のマスメディアであり、700万部以上の部数を誇るクオリティ・ペーパーである。それは国内外の報道に対して強い影響力をもっており、人間の尊厳に関わる事項において事実誤認の報道があれば、日本の一般読者だけにとどまらず、世界中の読者、知識人や研究者にもこれが真実だとの誤解を刷り込み、或いは、これを助長し、やがて誤解と偏見に基づく深刻な被害を世界に拡散する危険がある。   
ところでマスコミ報道による不法行為には、名誉毀損、プライバシー侵害、そして風評被害(所沢野菜風評被害事件最高裁平成15年10月16日判決・判時1845-26など)といった類型がある。名誉毀損と風評損害は主として誤報による法益侵害を対象とし、名誉毀損とプライバシー侵害は主として特定人に対する法益侵害を対象とするものである。  
差別的ヘイトスピーチなど、不特定多数の集団的帰属を貶め、その構成員の社会的評価を低下させる集団的名誉毀損については原則として不法行為の対象とはならないとするのが通説であるが、集団を構成する人数が少数である場合など、各人の人格的尊厳と密接に結びつき、その中核を形成しているアイデンティティに関わる事実が虚偽の報道によって不当に貶められたり、それが誤った風評となって個々の生活関係に具体的な損害を生じさせた場合、不法行為責任を免責する理由はない。 
 3 真実報道義務と訂正義務   
  ? 新聞報道は、広く社会に生起する諸々の社会事象の中から当該報道機関において、その読者に報道する価値があると考えるものについて取材活動を通じて資料を収集し、事実を正確に読者に提供することを主旨とするものではあるが、他方報道の迅速性も要請されるところであり、生成流動する複雑な社会事象を限られた時間内で取材し報道するについては、取材対象や取材方法等に自ら制約があるため、正確性がある程度犠牲になる事態が生じることもやむを得ない面がないとはいえないであろう。
しかし、今日の社会において新聞特に一流紙の影響力は絶大なものがあり、ひとたび新聞に事実が報道されるや、その事実は真実のものとして一般読者に受け取られて流布されるに至り、場合によっては取り返しの就かない結果が発生するおそれのある事項に関しては、それが公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的で報道しようとする場合であっても、慎重な取材が要求され、迅速性を多少犠牲にしても、正確性を最大限尊重すべく、かりそめにも誤った報道によって人の名誉、信用を不当に毀損しないよう注意すべき義務があるというべきである。(東京地判昭和52年7月18日判時880-56)
? そして、万が一誤った報道によって人の名誉、信用を結果的に毀損したときには、新聞記者及び編集者等において報道した事実を真実と信ずるについて相当の理由があり過失がなかったものとされる場合でも、続報又は訂正記事等により、先の報道が真実でなかったことを公表し、被報道者の失われた名誉、信用をできるかぎり回復すべき義務があるというべきである。(東京高裁昭和54年3月12日判時924-55)   
? 新聞等のマスメディアは、誤った報道によって人間の尊厳に関わる重要な事実を歪め、特定人ないし不特定多数の名誉、信用その他の法益を侵害し、また、侵害するおそれのある場合には、速やかに、それが真実でなかったことを公表して訂正すべきであり、これを怠って事実誤認の報道をそのまま放置することによって特定人ないし不特定多数の名誉、信用その他の法益侵害を惹起ないし拡大した場合、当該新聞社は被害者に対し、民法709条所定の不法行為責任を負い、同723条所定の名誉を回復するのに適切な処分を行う義務を負うことになる。
 4 朝日新聞の訂正義務違反等  
  ? 吉田証言の虚偽性にかかる訂正義務の発生  
産経新聞は1992年4月30日、現代史家の秦郁彦による済州島での現地調査をもとに、吉田証言を疑問視する記事を掲載した。それに呼応する形で、週刊誌なども吉田証言を「創作」などと報じはじめた。朝日新聞の2014年検証記事によると、これを受け、朝日新聞の社会部記者が、デスクの指示で吉田清治に会い、裏付けのための関係者の紹介やデータ提供を要請したが、拒まれたという。   
吉田清治自身も1996年5月、『週刊新潮』のインタビューで「自分の話は創作」であると認めていた。しかるに、朝日新聞の1997年3月31日付検証記事では、吉田証言の真偽は確認できないとするに止まり、これを虚偽だと表明することはなかった。 
ジャーナリストの池上彰は一旦掲載を拒否され、その後2014年9月4日の朝日新聞に掲載された朝日新聞の連続コラム『新聞ななめ読み』の原稿において「この証言に疑問が出たのは、22年前のことでした。92年、産経新聞が、吉田氏の証言に疑問を投げかける記事を掲載したからです。こういう記事が出たら、裏付け取材をするのが記者のイロハ。朝日の社会部記者が『吉田氏に会い、裏付けのための関係者の紹介やデータ提供を要請したが拒まれたという』と検証記事は書きます。この時点で、証言の信憑性は大きく揺らいだはずです。朝日はなぜ証言が信用できなくなったと書かなかったのか。今回の特集では、その点の検証がありません。検証記事として不十分です。」と書いている。  
  ? 挺身隊と慰安婦の混同にかかる訂正義務の発生   
    女子挺身隊とは、国家総動員体制のもとで、軍需工場などに動員された女学生たちのことで、慰安婦とは全くの別物である。朝日新聞は2014年の検証記事で、「当時は、慰安婦問題に関する研究が進んでおらず、記者が参考にした資料などにも慰安婦と挺身隊の混同がみられたことから、誤用しました」と釈明しているが、池上彰は前記コラムにおいて、「検証記事の本文では『朝日新聞は93年以降、両者を混同しないよう務めてきた』とも書いています。ということは、93年の時点で混同に気づいていたということです。その時点で、どうして訂正を出さなかったのか。それについての検証もありません。」としている。 
  ? 訂正義務の懈怠による被害の拡大     
    朝日新聞が報じてきた吉田証言が虚偽であることも、別物である挺身隊と慰安婦を混同してきたことについても、被告は、遅くても1993年1月当時には認識していたはずであり、速やかに、吉田証言を取り消し、挺身隊と慰安婦との混同を訂正し、読者に詫びるべきであった。
そうしていれば、それ以後、国内外における吉田証言における慰安婦狩りを真実であるとする報道や挺身隊と慰安婦の混同に基づく強制連行の報道は抑制されたはずであり、慰安婦を軍性奴隷と決めつけて日本を一方的に断罪したクマラスワミ性奴隷報告が国連人権委員会で採択されることもなかったであろう。   
    そして朝日新聞の1997年3月31日付検証記事においては、被告は、少なくとも、2014年8月5日付検証記事においてなされた程度の取り消しないし訂正を行うべきであった。同検証記事における訂正等は、決して十分なものではなかった。しかし、せめてその程度のものでもなされていたら、クマラスワミ性奴隷報告の誤謬を引き継いだマクドゥーガル慰安所報告が国連委員会に提出されることも、米下院決議121号が可決されることも、慰安婦の碑や慰安婦像が設置されることもなかったはずである。
? ニューヨーク・タイムズ等の海外報道機関への情報提供の責任 
  一般に情報提供者において、提供した情報がメディアに掲載されることを認識していれば、原則として共同不法行為(民法719条)が成立しうると考えられている。
最高裁平成14年1月29日第三小法廷判決(判時1778号28頁)及び最高裁平成14年3月8日第二小法廷判決(判時1785-38)は、新聞社から主張された通信サービスの抗弁を退けたものであるが、そこでは虚偽の事実を紙面で公表した新聞社だけでなく、掲載されることを予定していた通信社も新聞社とともに名誉毀損の被害者に対する不法行為責任を負うことが前提とされている。    
被告は、朝日新聞が吉田証言記事と挺身隊混同記事を繰り返し報道していた1990年代、英字新聞「朝日イブニングニュース」を発行し、米紙ニューヨーク・タイムズと提携していたのであり、朝日新聞に掲載された慰安婦関連記事についてニューヨーク・タイムズ等の海外のマスメディアに引用、転載されることは容易に認識しえたのであるから、ニューヨーク・タイムズ等に掲載された慰安婦問題にかかる誤報についても共同不法行為責任を負うのは当然のことである。   
  ? 小括              
    よって被告は、朝日新聞の慰安婦問題に関する誤報及びそれが真実ではないことを公表する等の誤報訂正義務を尽くすことなく誤報を放置した違法によって慰安婦問題に関する誤った事実と見解が真実として世界に広まり、諸々の国連委員会における勧告や米下院決議121号、そして慰安婦の碑・慰安婦像となって定着し、これによって多くの日本人・日系人が蒙った名誉、信用その他の法益侵害に対し、不法行為責任ないし共同不法行為責任を負い、これら日本人の名誉と信用を回復するのに必要な適切な処分(民法723条)及び損害の賠償を行わなければならない。   
                 
第5 原告らの損害   
 1 原告ら日本人が蒙った二重の名誉毀損の損害   
  原告らは、いずれも日本人としてのアイデンティティと歴史の真実を大切にし、これを自らの人格的生存の中核に置いて自己を形成してきた日本人である。    
  被告は、30年以上前から朝日新聞紙上で吉田清治の慰安婦狩りの証言を繰り返し取り上げ、これを真実として報道し、或いは、女子挺身隊との混同に基づいて慰安婦たちが組織的に公権力によって強制連行されたとの印象を与える記事を報道し、これらを訂正することなく放置することによって、慰安婦問題に関する誤解と偏見に基づく国際世論を形成・定着させ、日本人は20万人以上の朝鮮人女性を組織的に強制連行して性奴隷として酷使する20世紀最大級の残虐な人権侵害を行い、しかもそれを認めず、度重なる国際世論からの勧告にも従わず、被害者に対する補償も、関係者の処罰も、歴史教育も行わない無責任な民族ないし人種であるという不名誉極な烙印を押されるに至った。この烙印が日本人としてのアイデンティティを自らの人格的生存の中核に置いてきた原告らの尊厳を傷つけ、国際社会における客観的評価を下げてきたことは疑う余地のない事実である。
   被告は、国際社会における日本人の二重の不名誉を完全に拭い去るまで、真実を追及して明らかにする新聞社としての使命と日本人に濡れ衣を着せた張本人としての責任を果たさなければはならない。 
2 グレンデール市近隣住民である原告らの損害    
  ? グレンデール市慰安婦像の設置   
米国カルフォルニア州ロサンゼルス郡グレンデール市はロサンゼルスの市街地から北へ約16キロメートルに位置している同市の郊外都市の1つである。人口は約19万人、ロサンゼルス郡では、ロサンゼルス市、ロングビーチ市に次いで人口の多い都市であるが、アルメニア系が27%、韓国系が5.4%を占める。日系人は僅か0.6%のマイノリティである。
2013年2月、韓国系住民団体から市議会に対する強力な働きかけによって市内の公園に慰安婦像を設置する法案が提出され、多くの日本人・日系人たちが公聴会につめかけて反対意見を述べる等したが、同法案は採択され、2013年7月30日、公園に設置された慰安婦を象徴する少女像の除幕式が挙行された。
少女像の傍らには石碑が横たわり、「平和のモニュメント」のタイトルのもと、「1932年から45年までの間、日本の帝国軍により、韓国や中国、台湾、日本、フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシア、東ティモール、インドネシアの家々から引き離され、性奴隷を強制された20万人以上のアジアとオランダの女性を追悼して」「日本政府がこれらの犯罪の歴史的責任を受け入れることを勧告する。2007年7月30日の合衆国議会における下院決議121号の通過と、2012年7月30日のグレンデール市による『慰安婦の日』の宣言を祝して」との碑文が刻まれている。
皮肉なことに、「平和のモニュメント」と題された慰安婦像は、それまで地域社会において平和裡に共存してきた日本人住民と韓国人住民との間に分断と反目を招き入れ、それに起因する様々な市民生活上・精神衛生上の困難を発生させている。それは今や「憎悪と対立のモニュメント」となり、グレンデール市近隣に居住する日本人・日系人の憂鬱と屈辱の象徴となっている。  
  ? 原告馬場の被害   
    原告馬場は、1941年生まれの作家であり、代表作『落ちこぼれ軍団の奇跡』は、テレビドラマや映画『スクール・ウォーズ』の原作となって一世を風靡した。1989年に渡米し、1997年、ロサンゼルス市に移住し、作家活動を続けてきた。 
2013年2月、グレンデール市に突然降ってわいた朝鮮人慰安婦像の設置の法案に驚き、これを阻止する反対運動に参加した。同年7月9日、市庁舎の2階ホールで開かれた公聴会には約80人の日本人の男女が押しかけ、27人の証人が立ち、原告馬場を含めて20人の日本人が明確な反対意見を述べたが、証言終了後、推進派のクインテロ市議から罵倒された。「今日やってきた日本人はみんな右翼か。あなたがたは勉強不足だ。日本政府も認めている。日本の36都市が慰安婦に謝罪し賠償をすると表明している。南京大虐殺を知っているのか。バターン死の行進は…」。思わず「NO!」とブーイングしたが、ガッツーンと木槌を打たれ、「騒げば外へ出すぞ」と睨み付けられた。やがて評決が下った。4対1の完敗だった。  
クインテロ市議による公衆の面前での罵倒を受けたことは、原告馬場の人生最大の屈辱だった。帰宅の車中でも怒りは収まらず運転するハンドルを持つ指がブルブル震えたという。     
原告馬場の猛勉強がはじまった。市議たちが根拠としていた情報は、ほとんど韓国側からもたらされたものだということが分かった。それらは朝日新聞、そしてニューヨーク・タイムズの記事を下敷きにしたものだった。
ところが、その間違いをアメリカ人にいくら説明しても理解してもらえなかった。「お宅の国のクオリティ・ペーパーが書いてるじゃないか」とどこででも言われる始末。 
原告馬場は、日本の軍・政府による朝鮮人慰安婦の強制連行の虚構が真実として定着してしまったアメリカ社会において、無知蒙昧の嘲りと不都合な事実に目を瞑る不実な人物だとの誹りを浴びせられながらも、マイノリティとしてロサンゼルス近郊に住む日系人とその子どもたちの将来のため、そして韓国系と日系が仲良く共存できる社会をつくるため、粘り強く慰安婦の真実を訴えていくつもりである。そして朝日新聞が自らの誤報を認め、謝罪する記事を米紙に掲載したら、それを抱えてアメリカ中を行脚し、アメリカ人の誤解を解いて回る覚悟である。    
  ? 原告今森の被害       
    原告今森は、1940年京都府に生まれ、1987年米国人妻と家族でロサンゼルスに移住し、1994年よりビジネスコンサルタントを開業している。現在、在米歴27年、モメンタム・インターナショナル社の社長である。
原告今森もグレンデール市の公聴会で慰安婦像設置に反対する公聴会に参加した日本人の一人である。原告馬場とともにクインテロ市議から面罵を受けた。それは法案に反対する日系人を見下してする傲慢なお説教であり、歴史に対する無知を嘲り、人権に対する無理解を誹るものであった。 
人種の坩堝である米国の中で、ドイツ系の妻と家族を築いて暮らしてきた原告今森は、アメリカ社会に色濃く残存している人種差別が完全になくなり、アジア系・アフリカ系の人々が平等に自由を享受できる時代と社会の到達を心から希求しているが、今日の韓国系住民が展開している慰安婦像の設置運動は、日本人にとっても韓国人にとっても、何ら益するところはなく、ただ、相互の憎悪と混乱を拡大するだけだと考えている。米国に生活する善良な日本人・日系人にとって韓国人住民らが押し進めている慰安婦の碑と像の建立は憂鬱で苛立たしいものでしかない。      
原告今森は、地域社会の平和と和解に逆行して慰安婦像建設に邁進する韓国人・韓国系たちの言辞・行動が、今や日本人・日系人に対する日常的な苛めや嫌がらせの形で具現化しつつあり、人種差別の様相を呈してきていることを心から憂いている。   
そして、その淵源であった慰安婦狩り証言や挺身隊との混同によって世界に日本の組織的蛮行を印象づけてきた朝日新聞の報道が誤報であったことが明らかになった以上、朝日新聞は、そのことを世界に発信して日本人・日系人の名誉を回復し、誤解を正す義務があると原告今森は考え、本件訴訟の原告に加わった。      
  ? 原告林の被害     
    原告林は、1985年生まれの高野山真言宗の僧侶であり、2012年秋にロサンゼルス市のリトルトーキョーにある高野山米国別院に海外開教師として赴任し、その布教活動の拠点としている。   
    原告林が行っている宗教活動は、いわば「世界平和」の為であるという。怒りや憎しみは諍いと争いしか生まない。これを赦しと慈しみに変えていきたい。 
ところが慰安婦問題をめぐる朝日新聞の一連の誤報は、慰安婦の碑や慰安婦像の設置という形をとって、この怒りや憎しみの種をアメリカに住む人々にまで植え付けてしまった。何とも罪深いことである。2014年8月以降、朝日新聞は日本国内において慰安婦報道の取消しや訂正、そして謝罪をしたが、その影響は、まだ、アメリカにはほとんど及んでいない。  
    慰安婦像の設置は、ロサンゼルス近郊のコミュニティにおいてこれを推進する韓国人と反対する日本人との間に深い亀裂をもたらし、両者の対立は地域社会において穏やかに話し合うことすら困難にしている。日本人には、韓国人に対する警戒心が生まれ、韓国人には日本人に対する憎しみが育っている。お互いに仲良くしたい気持ちがあっても、相手が自分たちの国のことを凄く嫌っていたらどうしよう、と疑心暗鬼になってしまう。とても悲しいことであり、さらに悪い誤解を生んでいく可能性があり、そうした日々の小さな思いや出来事の積み重ねは、原告林が活動の拠点としているリトルトーキョー周辺や教育現場などにも悪い形で影響していることを憂慮している。例えば、日本人が韓国系の施設を借りるのに跪いて謝罪することを要求されるといった嫌がらせや、学校において日本人生徒が受けている辱めや苛めなどがそれである。そして自らも僧侶としての宗教活動において、地域社会の分断と対立に起因するさまざまな困難に遭遇している。  
原告林は、憎しみの種を撒いてきた朝日新聞は、速やかに米紙に謝罪広告を掲載し、慰安婦問題に関する誤解を解き、アメリカの地域社会に生まれた分断を修復し、日本人、韓国人を問わず、住民たちを憎悪と怒りの連鎖から救い出さなければならないとの思いから本件訴訟に加わることを決意した。   
  ? 慰謝料  
    原告馬場、原告今森及び原告林がグレンデール市における慰安婦像の設置に関して蒙った被害(公聴会での名誉毀損と侮辱、地域社会における日本人に対する苛めや嫌がらせ、宗教活動における困難等)に伴う精神的苦痛を金銭をもって慰謝するには、各自に対し、金100万円を支払うことが最低限必要である。    
 3 名誉回復のために必要な米紙等への謝罪広告     
   被告は、2014年8月5日付朝日新聞検証記事においてかつて紙面で報道してきた吉田証言が虚偽であることを認め、これを報じた記事を取り消し、挺身隊と慰安婦との混同による誤用があったことを明らかにして誤報を訂正したが、未だ欧米や韓国を含む国際社会における誤った世論の形成と定着が朝日新聞の誤報によるものだということを公式に認めるには至っていない。
朝日新聞の誤報記事によって形成された国際世論の誤解を解き、その誤解によって毀損された日本人の名誉を回復し、これによる様々な被害を回復するには、被告においてこの事実と責任を認め、世界に対して謝罪を発信することが何よりも必要である。よって被告は、ニューヨーク・タイムズ、AP通信、ロサンゼルス・タイムズをはじめとする朝日新聞の慰安婦誤報を引用、転載して誤解を拡大した海外報道機関に対し、別紙1?記載の真摯な謝罪広告を行い、かつ、国内の報道機関に対し、別紙2?記載の謝罪と誓約を掲載することが必要である。 

第6 まとめ   
   原告らは、民法709条、同719条及び同723条に基づき、請求の趣旨第1項及び同2項所定の名誉回復のための適当な処分を請求する権利を有しており、原告馬場、原告今森、原告林は、同709条及び同719条に基づく損害賠償請求権に基づき各自金100万円及び本訴状送達の日から完済まで年5分の割合による金員を求める請求権を有する。 


証拠方法
必要に応じて追って提出する。

添付資料
1 訴状副本                1通
2 資格証明書               1通
3 訴訟委任状                通
以上