第157号 皇紀二千六百六十七年(平成19年) 睦月(1月) TOPへ戻る |
「激動と混乱こそ民族再興の好機 中山 嶺雄 (戦乱続く平成十九年) 平成十八年末、イラク大統領サダム・フセインが殺害された。米国の石油獲得目的のイラク侵略は、国際法上違法であり、米国傀儡の現政権の法的合法性は極めて疑問であるから合法的処刑とは言い難く、事実スンナ派イスラム教徒の多くはフセイン大統領を殉教者と見做している。 フセイン殉教に続く平成十九年、当然イラク情勢は険悪さを増し、憎悪と混乱の連鎖が拡大して行く。単にイラク領内に限らず周辺諸国にも動乱は波及し、更には世界最強の米国に出血と疲弊を余儀なくさせ、従来から指摘している様に「世界戦国時代」がより深化して行く。 特に、イランの核開発は西亜細亜に多大な混乱を招く。一応は米国主導で「連合国(所謂国連)」が非難し、制裁も論議されているが、元来反米である中共とロシアは、直接、間接的にイランを援護して居り、基本的に反ペルシア、反シーアであるアラブ諸国も、反イスラエル、反米と言う一致点ではイランに共感と理解を示している。過日、米国空母が西亜細亜海域に増派される事を報じたロシア電映 の解説者は、米国のイラン攻撃が間近に迫り、米国が爆撃すれば、イランはイスラエルを弾道弾で攻撃するであろうと予測を述べた。「第一次大西亜戦争(所謂湾岸戦争)」に際してイラクがイスラエルへ弾道弾を撃ち込みアラブ民衆から拍手喝采を浴びた先例から考えれば、其の可能性は十分に有り、逆にイスラエルからイラン核開発施設や弾道弾基地への先制攻撃の予想も可能である。 平成十三年米国等のアフガニスタン攻撃で勃発した「第二次大西亜戦争」は、既に五年以上を経過して拡大を続け、イラク国内では反米武装闘争のみならず宗派対立が内戦化して居り、「クルディスタン」の完全独立は此処数年以内に実現するであろう。其れはイラクの解体を意味し、クルド人居住のイラン、トルコ両国に激震を与える。 世界的に動力源の確保が各国の急務となっている中で、世界最大の原油生産地域たる「ペルシア湾」周辺の混乱は、世界の石油秩序を脅かし、世界経済に深刻な打撃を与える。加えてアル・カイダ等に因る石油、天然瓦斯等施設への破壊工作ー例えばサウディアラビア、ダーラン近辺の原油積出し桟橋の破壊等ーが実行されれば、現在進行中の「第三次石油危機」は、一層深刻な問題を提供する結果となる。即ち「価格」の上昇のみならず「量」の確保に各国が鎬を削らねばならなくなる。 昭和四十八年の「第一次石油危機」では一バーレル三ドル程度の原油が四倍の十二ドル 迄上昇し、同五十四年イラン、ホメイニ革命とその後の「イラ・イラ戦争」を通じて発生した「第二次石油危機」で原油価格は倍加して二十ドル代に上がり、その後比較的に安定していたものの、平成十七年頃から急激な上昇が始まり、同十八年秋にはニューヨークで七十七ドルに迄高騰した。其の原因は、中共、印度の大量買付け、輸入増、ロシア等の「資源ナショナリズム」の高まり、国際投機資金の市場濫入等であるが、基本的には人口急増、資源枯渇傾向の強い人類社会で「有限エネルギー」の獲得合戦が展開されているのが主因である。現在、石油のみならず、総ての鉱産資源や食料生産物迄もが価格上昇している。第一次石油危機後の「狂乱物価」が再来する可能性もある。「不況下の物価高」ー所謂スタグフレーションーは、深刻な物不足が原因であった。 今後の世界が如何に変化するか、西南亜細亜の激動と混乱は、先行きの不透明感を人々に与えているが、国家や民族、或いは人類の未来を予測する事は、ある程度は可能である。 (歴史家の視座に立脚せよ) 「歴史」とは、一般に過去の事実の記録と 考えられ勝ちであるが、現在も一瞬後には過去になるのであるから、現在直面している現実も歴史として認識しても良いのである。更には、過去の多くの知識に基づいて多角的に考察すれば、未来の予測も可成の確立で可能であるから「未来史」も当然有り得るのである。即ち、歴史には「過去史」「現在史」「未来史」があると考えて良い。 又、過去の歴史には、一定の「歴史法則」を見出す事が可能であり、所謂「歴史観」と言う。歴史観には、「唯物史観」の様に、其れ自体が自己主張する能動的なものも有れば、「ことあげ」しないのを良しとする神道的歴史観も有る。又、歴史を一定の法則に基づく「必然」と把える見方と「偶然」と認識する観点が対立する場合も有るが、二者択一の必要は無い。 「平家物語」に示された「盛者必衰の理」は「必然」であるし、「アレクサンドロス大王」や「チンギス・ハーン」の出現は、歴史の「偶然」である。此の様な過去に於る数多くの「必然」と「偶然」の積重ねの中から、より的確に現実の世界を見据え、未来の予測が可能に成るのだ。 一般人と歴史家の社会的事象への認識、把握の相違点は、時間感覚の差異にある。則ち、常日頃から歴史に携わっている者は、物事を数年、数十年、時には数百、数千年の単位で認識、考察するが、一般の人々は、直面する問題を短期的に把える場合が多い。 吾等は、当然、より大局的な観点から社会的事象を多角的に認識、把握、判断すべきであり、則ち常に歴史家の視座に立脚して高所から俯瞰しなければならない。 例えば、今回の米国に依る「イラク侵略」も、七十年前の『大東亜戦争』との類似性、共通性から判断すると理解し易い。 『日露戦役』以前から満州、北支の市場、資源の利権獲得を狙っていた米国が、あらゆる権謀術策を弄して最終的に我国を『大東亜戦争』に追込み、軍事的勝利の後に「ポツダム宣言」を受諾させた。支那、満州の利権は、蘇連邦と中共に横取りされたものの、長期に渡る軍事占領を通して、「日本」の奴隷化、家畜化に成功した。 今回の「イラク侵略」も、対日侵略と同様に イラクを苛めぬいて最終的に適当な言い掛かりー「大量破壊兵器」保持の危険性喧伝等ーを付け、軍事的に勝利して石油資源獲得を狙ったが、最後の詰めで米国は失敗した。「日本」支配に「GHQ」は「日本政府」を温存し、其れを効果的に悪用して狡猾な間接支配を実施したが、「イラク」の場合、イラク政府及び国軍を一旦完全に壊滅し、米国及び米軍が直接「アラブ民族主義」と「イスラム教」と対決する立場に身を置いてしまったのである。「第二のヴェトナム」と呼ばれる底無し沼に落込んだ米国は、足掻けば足掻く程に深みに嵌まる悪循環に陥っている。 正に「歴史に学ぶ」必要性を物語っている。 (外圧を以て奇貨とすべし) 國史を回顧、再考すれば、温暖高雅な我国の政治、経済、社会情勢が激変する時、其の背景には、往々にして「外圧」が存在する。 百済滅亡、蒙古襲来、幕末維新、大東亜戦争等の國史的大事件、国家的危機は勿論、鉄砲伝来、切支丹来航、阿片戦争等の「外圧」も又、我国の社会に多大の影響を与えた。 外圧に基づく国際的国内的緊張は、常に、我国民の共感と団結、帰属意識を誘発、振起し、突発した危機的事象に対抗する新たな政治、経済、社会体制の構築を図ると同時に、旧き佳き伝統や文化、慣習の価値を民衆に再確認させて来た。 『大東亜戦争』『終戦』後の「日本」は、被占領下の米国支配下で、三千年にも亙り育み慈愛しんで来た民族的価値観を全面的に否定させられるに至った。無論、当時の先人達の懸命の努力で『國體の護持』だけは、完全な形態では無いものの、何とか護り得たが、社会の皮相を支配する観念や論理は、紅毛碧眼、欧米蛮夷の低劣野卑な其れに転移し、悪性の癌の如く、日夜、清澄の大和島根を侵食し、大和心を汚染し続けている。明治維新で欧化政策を採用したのは、欧米帝国主義に対抗する為に日本社会の上層部が判断決定した自主的な政策であった。だが、占領者、反日圧政者たる「連合国(米国)軍」「総司令部」が策定した「GHQ反日支配体制」は、明らかに反日的、反民族的、売国的な許し難い敵対的社会体制である。日本民族の尊厳を貶め、日本国民の国益に反し、延いては人類の存続を危うくする体制であり、価値観である。斯る劣等な価値観が六十二年も継続した「反日日本」に於て、三世代にも渡る反日洗脳が継続すれば、当然『日本及び 日本的なるもの』は否定、排除、追放されて、社会上層部から大衆に向けて、反日、非日、脱日の洗脳が定着化して行く。正に『國史』上最大、最悪の危機である。既に、衣食住の生活形態を俯瞰すれば、欧米社会と何処が違うのか、斯る『日本民族』滅亡の危機に際して、吾等真正『日本人』は、最大最悪の打倒すべき「敵」を常に意識して、護るべき最上の価値を護持しつつ、『日本民族再興』に向けて聖戦を敢行し続けねばならない。 無論、護るべきは三千年に亙って連綿として継続する我國悠久の大義たる『國體の護持』であり、打倒、破砕すべきは「米国占領軍」が強要した反日体制であり、何よりも其の低級劣悪汚臭に塗れた価値観に拝跪隷属するエセ日本人大衆の醜態である。真の敵は、此のエセ日本の内側にあるのだ。 彼等、民族的価値観を忘失した反日被洗脳日本人大衆に対して、如何にして民族的意識を覚醒し、民族的自覚を高めるかの課題に応える最大の効果的方途は、「外圧」の効果的宣伝と意識化である。 平成十四年九月十七日の「小泉訪朝」は、其の典型的好例である。凶悪且つ理不尽な北朝鮮の日本人拉致が判明して、一挙に日本人の民族感情が爆発し、所謂「戦後」初めて「対等外交」が展開されるに至ったのである。以来、「日本」政府、マス・メディアの対北朝鮮政策、対応は、独立国の其れに近い水準に迄高まっているのである。斯る好ましい傾向が、中・韓・米国等、「反日国家」の反日政策、圧力を受けて増幅するのであるから、吾等は、其等の「外圧」を『奇貨』として活用すべきである。 |