大阪府立阿倍野高校を訪問


月曜評論を読んだ、私たち「大阪府の公教育を考える会」のメンバー5人は5月18日、大阪府立阿倍野高校を訪問し 片平校長と面談した。

 今年の卒業式で、国歌斉唱時に起立しない教諭が多かった点を、校長に質問した。
国歌斉唱に関しては、学習指導要領に則り、且つ大阪府教委からの通知に従って行うはずである。
なぜ、これが守られないのか。

 片平校長の答えは「校長から指導をさせていただく。」
いきなり話の穂先を摘む様に感じる発言であった。
増木氏 : 「指導されて、来年2月の卒業式では、今年のようにはならずキッチリと式典が行われると
      お考えですか?」
片平校長 : 「それは、そのときになってみないとわからない。」
同席した私達が、我が耳を疑ってしまったのはお察しいただけるだろうか?
この遣り取りは、南口教諭の論文に書かれていることのそのまま再現であった。
「指導します。」の一点張りの校長。
 片平校長は、今年2月の卒業式当日の教職員の失態を、失態とは捕らえていらっしゃらないのだ。
その場しのぎの逃げ口上で、この場を押さえられれば、それでよいらしい。
増木氏が「指導が至らず、今年と同じような結果が出た場合、実際には罰則はありませんが、
校長先生の退職金を担保にしても良いほどの覚悟はお持ちでしょうか?」と、畳み掛けるように
質問されると、「はあ〜?」という間の抜けた返事の後、言葉の意味を理解されたらしい校長の
一瞬の狼狽ぶりが人間らしく見えた。

 阿倍野高校の「職員会議規則」に、
【5 校長は、会議の決定を最大限尊重する。】という条目がある。
 阿倍野高校の現状では、職員会議で決定された事項は、例え法令法規に反することであっても、
校長はその決定を、最大限尊重しなくてはならない立場にある、ということだ。
公に存在する諸法令や諸規則に反することであっても、教育公務員である阿倍野高校職員の
多数決により、閣議決定されれば、校長はそちらを最大限尊重する立場になる。
 我々の常識で考えた場合、教育公務員がさほど法を犯すのであろうか?との疑問が起こるが、
大阪府立阿倍野高校では、実際に起きている。
 学校内で最高権力であろう校長の権限が及ばないところで、それは決定され、府教委からの通達も、
学習指導要領をも眼下に置かれ、大手を振って罷り通っているのである。
阿倍野高校は「職員会議規則第5条」があるために、まさに「治外法権化」してしまっているのが
実状である。
 私達は、この「職員会議規則」の改正を提案してみた。
増木氏 : 「校長の権限が、職員会議規則に及ばないのならば、指導できるわけがない。
『阿倍野高校では、毎年卒業式には起立をしない、国歌斉唱をしない、国旗国歌法を守らない教諭がいる』ことを、保護者に知ってもらうために、校門前で生徒にビラを渡しますよ。」
片平校長 : 「職会則の改正はずっと前から考えていた。夏休み前後には改正するつもりでいた。」即答があった。
咄嗟に出た・・・と言ってもいいかもしれない。
片平校長 : 「それはどのようなビラですか?」
増木氏 : 「月曜評論のコピーです。あの、職員会議の様子を実名入りで書いてある・・・。」
片平校長 : 「配るのはいつ頃ですか?」
増木氏 : 「一学期の終業式前くらいですね。」
片平校長 : 「2月、3月頃には改正しようと思っていた。」
「整合性を持たせて改正しなくてはならず、能力的に時間がかかる。」
「もう、夏休み前後には改正できる予定である。」
「それでも、ビラを配るのか?」
今までの寡黙な感じの校長の態度とは一変し、質問と言い訳が交互に矢継ぎ早にでてくる。
職員会議の様子を、生徒や保護者に知られるのは、校長としては不本意なのだろう。

増木氏 : 「【職員会議規則】の中に【大阪府立高等学校の管理運営に関する規則第十条】
校長の専決事項を尊重するという事項を織り込むべきでしょう。」
なんとなく渋る校長は、「教育委員会と相談して・・・。」と言葉を濁す。
増木氏 : 「職員会議規則の改正は、校長の権限ですよ。」
「卒業式で起立できなかった教諭には、どのような処罰、処分をされますか?」
片平校長 : 「毅然とした態度で指導します。」
増木氏 : 「具体的には?」
片平校長 : 「・・・・・・」

 片平校長は、来年3月で定年退職らしい。
このまま、揉め事を表沙汰にして波風を立てなくても、あと数ヶ月で円満退職。
面倒なことは、避けて通りたいのに・・・という無言の抗議が感じられる。
 いつまで立っても話は噛み合わず、押し問答の末、私たちは6月11日の回答期限
を設け、下記3項目の要請をした。

@  職員会議規則を急いでもらうことを大前提に、改正までは第5条の削除を
  校長から職員に言明すること。

A  卒業式での国歌斉唱を先陣を切って反対した坂口教諭と、国歌斉唱を
式次第から外せと発言した桐山教諭への面会を申し込んだ。
どういう信念で、もしくは思想信条で、国歌を蔑ろにするのか、一般市民の感情として
大変興味深く感じたからだ。

B  卒業式での国歌斉唱のとき、着席したままだった教諭の処分を、校長から
大阪府教育委員会に上申してほしい。

 なかなか、一般的な感覚、一般市民からの視点を理解してもらえない、私たちも
官僚の心中を理解できないまま、約一時間の面談は終わった。

最後に、前川氏が「以前のように名門の阿倍野高校に戻ってほしいですね。」
と発言したときに「無理だと思います。」校長の口からサラリと飛び出した言葉に、
また私たちは我が耳を疑った。
校長は、卒業生、在校生、今後入学してくる生徒たちのことを考えたことが
あるのだろうか。
学校の最高地位、最高責任者である校長自ら、阿倍野高校に誇りを持とうと
していないではないか。
これでは、教諭に対して熱心な指導は期待できるとも思えないし、生徒や保護者
に対しては、ひどく無礼な発言ではないか。

言いようのない虚しさを抱えたまま、校門をでた。

6月11日 片平校長より、増木氏に電話が入り、先の3項目の回答が寄せられた。

@ に関して
 6月中に「職員会議規則」を全面改正するので、第5条の削除を職員に言明はしていない。
Aに関して
 坂口、桐山両教諭との面会は拒否する。
Bに関して
 教育委員会の指導に反してしまったことは、校長が時間をかけて指導する。
 教育委員会の方針に反したことを上申はできない。(したくない?)

何らかの信念があってか、国旗国歌法、府教委からの通達、学習指導要領をも遵守しない
教育公務員。学内では最高決定権と最高責任を負う校長は、府教委にも職員にも
「Yes.」なWoman.
そこに通う生徒達にとって、一番良い環境を模索していただきたいと痛切に願う。

追記
平成16年7月3日、増木氏からの連絡で、阿倍野高校職員会議規則が改正され、7月1日より施行される運びになっていることを知った。
私は片平校長の迅速な対応に、心から敬意を表したいと思う。
この改正の目的が「校長の権限の確保」であり、ひいては「生徒達の健全な精神を養う」ための、教職員の指導に反映されることを願う。
生徒たちが阿倍野高校で過ごす3年間を、粛々とした入学式で迎え、粛々とした卒業式で送り出してやっていただきたい。教職員の身勝手な信条で、生徒達にとって大事な節目の式典を、台無しになどされたくない。

まだ私の中では、「国歌斉唱」に反対する教諭が、どういう持論、思想、信条なのか、聞いてみたい好奇心は消えてはいない。この日本という国に生まれ、奇しくも「教育公務員」という職に就きながらも、国歌や国旗に誇りが持てず、教育の場で個人的価値観を押し通そうとする、一部の教職員とお会いする機会を是非とも持ちたいものだ。
そのときには、「日本に生まれ、この国の文化、風土の中で成長した私たちの子供に、誇れる国であることを教えていただきたい。国際社会の中で、誇りを持って生きていける人間に成長するよう、手助けをしてほしい。」そう、お伝えしたい。教育者自身がこの国を誇れないのなら、出来ない相談のようだが。


※大阪府立高等学校等の管理運営に関する規則
(校長の専決事項)
第十条 校長の専決事項は、この規則の他の条項に定めるもののほか、次のとおりとする。
一 校長及び所属職員の出張、休暇その他服務の処理に関すること。
二 その他教育委員会の指示する事項の処理に関すること。
2 校長は、前項各号に掲げる事項のうち、重要又は異例と認められる事項の処理については、あらかじめ、教育委員会の承認を受けなければならない。
(昭五三教委規則二・全改