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平成16年9月22日   ◆27番 豊田稔議員



平成16年9月22日   ◆27番(豊田稔議員) 個人質問をいたします。
 まず初めに、本市の小・中学校における性教育と道徳教育について御質問いたします。
 本年6月のある日、西山田中学校 の保護者の方から御相談を受けました。その内容は、昨年の2年生を対象に実施されました性教育において、生徒全員にコンドームを配布し、指などに装着させ るなどの過激な実習がなされたとのことが判明しまして、今年2年生となる我が子には何としても受けさせたくないのだという御相談でございました。
 くしくも私は、昨年10月議会におきまして国会での山谷えり子議員の質問を引用 し、豊中市で過激な性教育が実施されているが、本市での取り組みはどうであるのかをお尋ねいたしましたところ、教育監からは「今後とも性教育推進のため努 力してまいります」との回答がありましたが、過激な実習については一切触れられておりませんでした。1学期に既に終了しておりましたので、なぜ、そのこと に関しての御報告がなかったのでしょうか、御説明を求めます。
 また、8月にはさらに詳しい性教育の内容が確認されました。一つには、独自のルー トで入手したという帝王切開等の映像を生徒に見せたというものであります。それに、私は拝見しておりませんが、相当にリアルな人形や分娩用の鉗子を用いて 授業がなされたとの報告がありました。まず、これらの一連の授業内容が事実であるのかないのか。また、事実であるならば、それらが適正な範囲内であったの かどうか、御所見をお示しください。
 いずれにせよこのような保護者の抗議により、昨年のような過激な授業は見合わせ る。そして、10月1日には保護者にも、使用した映像や道具類等を見せるというようになったと仄聞しておりますが、どのようになっているのでしょうか。こ れまでの状況と今後の見通しについて御所見をお示しください。
 さまざまな報道等によりますと、全国の中学生による性的な非行等は少なくないようであります。残念ながら、これらの非行が著しく多い学校においては、やむを得ず実施される性教育が過激となる必要があるのかもしれません。果たして西山田中学校において、そのような必要性が存在したのでしょうか、ここ数年間の状況をお示しください。もし、必要性がなかったのであれば、いたずらに好奇心をあおられ、心に傷を負った生徒がいなかったことを祈るばかりであります。
 本市では、教科書だけでは不十分であると判断され、副読本が昭和63年に作成され ました。川西教育監は、当初よりこの副読本作成に参画されておられる専門家であります。この10数年間で一度改訂されましたが、副読本の内容や副読本自体 の必要性は以前と変わっておるのでしょうか、御所見をお示しください。
 私は、活字やイラストがひとり歩きする危険性を感じております。例えば小学校1・ 2年用の「おおきくなあれ こころとからだ」の14ページに、「じぶんのからだは じぶんだけのものです。」と言い切っております。こんなことを小1や小 2の子供が家庭内で言い出したら、保護者はどう思うでしょうか。一体学校は何を教えているんだろうと不信感を募らせるのではないでしょうか。ちなみに22 ページには「みんなのいのちは、お父さんとお母さんからもらったとても大切なものです。」とあるのですが、その後の方まできちんと読まなければ誤解を招く ものであって、子供のみならず、大人でさえその部分だけを取りざたする傾向に今はあります。
 小学校5・6年用の「あなたたちへ こころとからだ」の24ページ、5、6行目に は、「性交は人と人のふれ合いの中でもっともすばらしいもののひとつです。」とあります。この文章がひとり歩きしないように、教師がこれは大人になってか らですよと、決して今すぐではないことを告げるべきだと思います。それがなければ、子供たちが混乱しかねません。子供たちは往々にして大人が困る言葉を口 にします。ましてや学校で習いましたよというにしきの御旗をかざされたら、保護者はお手上げです。
 私は、年齢に応じた適切な性教育は大変重要であると考えます。しかしながら、いた ずらに寝た子を起こすような授業内容では困るのであります。小・中学生が性交渉を持つなどということが当たり前であるかのような錯覚を与えないという配慮 が不可欠であることは言うまでもありません。プラトニックな愛情や相手を思いやることの重要性、そして、万が一の場合に伴う大きな責任などについて、道徳 的な視点からの教育が欠かせないと考えるのであります。いずれにせよ高校受験を目前に控えた中学生にコンドームになれさせる必要が本当にあるのか、私には 理解ができないのであります。
 次に、その大切な道徳教育についてお尋ねをいたします。
 先日、私は大阪教育大学の藤永芳純教授のお話を聞く機会を得ました。以下、先生の道徳教育に関するお話を少し御紹介させていただきます。
 人間は、だれでも真の自己でありたいと思っている。自分らしい生き方をしたいと 願っている。想い、夢とは、一人一人が持つ具体的な内容はそれぞれ異なるにしても、自分がそうなりたい、達成したい、あるべき自己、理想の自己、真の自己 を意味しており、それはまた、自己の可能性でもある。この意味で想い、夢を追求することは、自分探しの旅を続けることであり、自己実現を目指すことであ る。
 そして、こうした想い、夢を追求するのは子供自身であり、子供はそのための力を獲 得しなければならない。道徳教育とは、子供一人一人が自分の想い、夢を追い求めていくことができるための力を、言いかえれば生きる力を子供自身が獲得する ための営みのことである。そして、道徳教育を子供の側から見れば、自分が自分の未来を切り開いていくための力を獲得する営みである。
 また、人間は人間社会の中で人間になるのだという文脈で考えれば、社会性の獲得は人間になるための必然的な教育の内容である。それゆえ社会性の獲得、社会適応の能力の獲得が、道徳教育の第一段階の課題である。
 そして、私たちが持たなくてはならない道徳の第二の内容は普遍性である。普遍性と は、普遍妥当的な原理、すなわちだれもが遵守すべき原理という意味である。個別の社会性を超えた人間として遵守していくべき規範としての普遍性を要請する ことは可能であるし、それは道徳を真の道徳として立てるための条件である、とのことでありまして、道徳教育の重要性を改めて確認させていただきました。
 本市における小・中学校の道徳教育は、どのようにされておられるのでしょうか。取り組みの状況、年間の指導計画、総合的な学習との関連についてもお示しください。
 次に、教科書採択についてお尋ねいたします。
 平成14年8月30日付で各都道府県教育委員会教育長に対し、文部科学省初等中等教育局長名で教科書制度の改善についての通知がなされました。その内容は以下のとおりであります。
1 調査、研究の充実に向けた条件整備について。
 @十分な調査・研究期間の確保。
  市町村教育委員会において、教科書見本が送付され次第、速やかに調査、研究に着手するよう市町村教育
  委員会に対する指導に努めること。
 A調査、研究のための資料の充実。
  市町村教育委員会に対する指導のために都道府県教育委員会が作成している選定資料の内容を一層の工
夫、充実に努めること。
 B保護者等の意見を踏まえた調査、研究の充実。
  教科書用図書選定審議会や採択地区に設けられる選定委員会等への保護者の参画をより一層促進すると。
2 採択手続の改善について。
 @市町村教育委員会と採択地区との関係の明確化。
 A採択地区の適正規模化。
 B静ひつな採択環境の確保。
  静ひつな採択環境を確保していくことが重要であり、それぞれの地域において広く 関係者の理解を求     めるよう努めるとともに、さまざまな働きかけにより円滑な採択事務に支障を来すような事態が生じた場合や、違法な働きかけがあった場合に は、各採択権者が警察等の関係機関と連携を図りながら、毅然とした対応をとるよう指導、支援に努めること。
 C開かれた採択の一層の推進。
  採択結果や理由等の採択に関する情報の積極的な公表に努めること。
3 その他。
 保護者や地域住民の教科書に対する関心にこたえるとともに、教員による教材研究や児童、生徒による学習の深化、発展に資する観点から、各学校の図書館や公立図書館に教科書を整備するように努めること。
 以上のように通知されたのであります。
 平成17年度使用の小学校用教科書採択について、大阪府教育委員会からはどのような指導がなされ、本市としてどう対応されておられるのか、お示しください。
 そして、学校票と呼ばれる下部機関による絞り込みによらず、教育委員みずからが教科書を手にとって採択に当たっていただかなければなりませんが、膨大な数量をじっくりと時間をかけて比較検討され、慎重に採択がなされたと信じますが、教育委員会の御所見をお示しください。


◎川西章教育監 学校教育部にいただきました数点の御質問にお答えいたします。
 まず、性教育についてお答えいたします。
 最初に、昨年10月議会時点での西山田中学校の性教育の現状について報告がなかったことについてでございますが、本市教育委員会におきましても、本年6月まで保護者等からの御指摘がなかったため、事実を把握できていなかったのが現状でございます。
 今後は、小・中学校性教育推進委員会を中心に、各小・中学校の性教育の現状をより一層把握してまいりたいと考えております。
 次に、当該中学校において行われた授業内容及びそれらが適正な範囲内であるかにつ きましては、昨年度、コンドームなどを使った授業が行われていたことは事実でございます。また、具体物を用いての指導につきましては、児童、生徒の理解を 深め、教育的効果があるものと考えており、性にかかわる授業につきましても同様で、コンドーム等の具体物を使用しての授業につきましても、原則的には禁止 いたしておらず、児童、生徒の実態や保護者の理解のもと、効果的に指導する必要があると考えております。
 次に、西山田中学校の これまでの状況についてでございますが、本年6月15日に保護者から学校に対して性教育についての御指摘があり、学校長からの事情聴取、学校と保護者との 協議、さらに教育委員会と保護者との協議を7月中旬まで重ねてきたところでございます。その結果、本年度の授業ではコンドームは使用しておりません。
 なお、当該校におきましては、今日までの経過を保護者に理解していただくために保護者説明会を開く予定であると報告を受けております。
 また、ここ数年間の生徒の状況につきましては、特に大きな問題があったという報告は受けておりません。
 次に、性教育副読本の内容やその必要性についてでございますが、本市におきましては性教育を人権尊重の精神に基づき、正しい性の知識のもと、生命を尊重し、自他の多様な生き方を認め、思いやりの心をはぐくむことを目的に副読本を作成してまいりました。
 現時点におきましても副読本の必要性は変わっていないものと認識しており、今後とも児童、生徒の実態や社会の変化に応じた効果的な性教育の推進に努めてまいりますので、よろしく御理解賜りますようお願いいたします。
 続きまして、道徳教育についてでございますが、道徳教育は豊かな心を育て、未来に向けて人生や社会を切り開く実践的でたくましい力を育成するため、学校の教育活動全体を通じて行う重要なものととらえております。
 本市におきましては、本市の教育の方向を定める吹田市学校教育改革基本方針においても、心身ともにたくましく生きる子供、力を合わせてともに生きる子供等目指す子供像を掲げ、心の教育の重要性について示すとともに、本市で作成しております道徳教育副読本や文部科学省が発行しております「心のノート」の活用、体験的な活動等を通して、心豊かな子供の育成に努めております。また、各学校におきまして、各教科、領域等との関連を重視した全体計画、年間指導計画を作成し、児童、生徒や地域の実態を踏まえ実践しております。
 総合的な学習の時間との関連につきましては、自然体験やボランティア体験など多様で豊かな活動を総合的な学習の時間において取り組む中で、その体験や経験を通して現実の社会の出来事などをみずからのこととしてとらえ、道徳的な実践力の育成に努めております。
 御指摘のとおり道徳教育の実践に当たりましては、生きる力や自分の未来を獲得するための営みであること、また、社会性の獲得、社会適応能力の獲得やだれもが遵守すべき原理である普遍性について、十分に認識を深めることが重要であると考えております。
 教育委員会といたしましては、今後も規範意識の醸成や他者を思いやる心、しなやかな感性、社会性、普遍性などをはぐくむ道徳教育の充実について、各学校が創意工夫し、一人一人の子供の心に響く取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 次に、教科書採択につきまして、本年度小学校の平成17年度(2005年度)使用 教科用図書についての採択が終了したところでございます。今回の教科書採択にかかわって平成16年(2004年)4月6日付で文部科学省より採択通知があ り、それを受けて大阪府教育委員会からは、4月16日付で採択についての基本事項が示されました。本市といたしましては、これらの通知を受け、専門的な調 査、研究、適正・公正確保、開かれた採択の3点に配慮し、採択事務を進めてまいりました。
 なお、いわゆる学校票につきましては、現在教育委員会の諮問を受けた選定委員会及び調査委員会において調査、研究を進め、調査報告をするに至っており、全く取り入れていないのが現状でございます。
 また、教育委員会におきましても、今回開かれた教育委員会の理念に基づき、教科書採択を公開にしたことも含め、各種目において十分に時間をかけて論議を重ね、採択を行ったところでございます。
 教育委員会といたしましては、来年度には中学校の教科用図書についての採択も控えており、教科書採択の一層の充実に努めてまいりますので、よろしく御理解賜りますようお願い申し上げます。