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 教育基本条例に対するわが党の見解
 
教育基本条例に関するPT   H24-3-27
  
教育基本条例に対するわが党の見解

平成24年3月27日(火)
教育基本条例に関するPT

本プロジェクトチームは、本年2月8日の設置以降、8回にわたり、大阪府教育基本条例案について検討を行ってきた。「大阪維新の会」が提起した教育行政おける責任体制や、教職員組合に係る問題意識は、わが党が以前から保有するものであり、その解決のための施策は、すでに「教育再生会議」の累次の提言などに示されている。
これについて、国が立法措置すべきところを、その作業が行われないために、大阪府が独自に条例案を策定するに至ったことについては、わが党は率直に反省し、これを機会に、立法府として必要な制度設計について検討すべきであるとの考えのもと、以下に、具体的な見解を述べるものである。


1.不適格教員に対する分限処分

現 状
○ 現在の教員免許更新制度は、不適格教員の排除を目的としていない(学び直し)(参考法令2ページ)。
○ 民主党が教員免許更新制度の抜本的見直し(廃止)を公約した結果、制度が形骸化。

維新の会の考え
○ 指導力不足教員は分限処分(免職)すべき(条例)(参考法令4ページ)。
○ 人事評価が2年以上最下位の職員(降任・免職)、職務命令違反を繰り返す職員(免職)は分限処分すべき(条例)(参考法令5ページ)。
○ 校長による教員の授業に関する評価に、生徒又は保護者の評価を踏まえる(条例)(参考法令7ページ)。
⇒ 教師は厳しい指導も行わなければならない(人気商売ではない)が、一方、生徒や保護者の評価をどう判断するか。

自民党の考え
○ 教員免許更新制度が本来の目的・効果(不適格教員に免許を持たせない)を発揮できるよう見直す(教育職員免許法の改正)(参考法令2ページ)。
⇒ 10年ごとに30時間の講習受講のみで更新するのではなく、厳格な修了認定とともに、分限制度の活用により、不適格教員に厳しく対応する。

○ 指導力不足と認定されている教員については、更新講習ではなく、指導力を上げるための研修を優先的に行い、改善が図られない教員については、分限制度を有効に活用し、教員免許状を取り上げるなど、不適格教員に免許を持たせない仕組みとする。

○ 教育公務員特例法に、教員評価、指導力不足認定、分限の厳格化に関する規定を設ける。
⇒ 教育委員会は、指導力不足教員の認定をはじめ、教員の評価を校長や教育委員会が行う際に、保護者、学校評議員、児童・生徒等からの意見も反映させる。その際、意見を聞く項目や、意見を反映させる際の重み付けを適切に判断し、評価する。
⇒ 教育委員会は、指導力不足教員の認定基準を明確化し、各教員の日頃の勤務状況を蓄積し、教員の適性を十分見極め、指導力不足教員の認定をきちんと行う。プライバシーに配慮した形で、指導力不足教員の人数、改善への取り組み、及び成果についても分かりやすい形で公表する。

○ 分限の厳格化について、現行法の記述を強化する。
(例1)教育公務員特例法(指導改善研修後の措置)
第二十五条の三 任命権者は、前条第四項の認定において指導の改善が不十分でなお児童等に対する指導を適切に行うことができないと認める教諭等に対して、免職その他の必要な措置を講ずるものとする。

免職その他の必要な措置を講じなければならない。

(例2)地方教育行政の組織及び運営に関する法律
(県費負担教職員の免職及び都道府県の職への採用)
第四十七条の二 都道府県委員会は、地方公務員法第二十七条第二項及び第二十八条第一項の規定にかかわらず、その任命に係る市町村の県費負担教職員(略)並びに講師(略)で次の各号のいずれにも該当するもの(略)を免職し、引き続いて当該都道府県の常時勤務を要する職(指導主事並びに校長、園長及び教員の職を除く。)に採用することができる。
一 児童又は生徒に対する指導が不適切であること。
二 研修等必要な措置が講じられたとしてもなお児童又は生徒に対する指導を適切に行うことができないと認められること。

免職することができる。

○ 常習的職務命令違反者に対する懲戒・分限処分(大阪府職員基本条例では免職)の導入を検討する(参考法令6ページ)。

○ 教員の授業の評価について、学習指導要領違反などの偏向教育についても、法的措置の導入を図る。
⇒ 現在は、学校教育法などに特段の規定がなく、一般的に、地方公務員法(第29条第1項)に基づき、任命権者である教育委員会の権限と責任のもとで、懲戒処分が行われている(参考法令4ページ)。



2.教育委員会における責任体制の確立

現 状
○ 首長が選挙公約などに基づいて教育行政に言及すると、政治介入と批判され、首長が住民の期待に応えられない。
○ 地方教育行政法上には、首長の教育行政上の明確な責任規定がない。
○ 首長・議会と教育委員会が、過度に牽制・抑制の状態にあり、地方分権時代に応じた教育行政の迅速・効率的な運営ができない。
○ 教育委員は非常勤・兼職で名誉職化しており、月1〜2回程度の会議では、事務処理や行政執行が迅速に行えない。
○ 現場の実権は教育長にあり、教育委員会が教職員組合と慣れ合い関係にある。

維新の会の考え
○ 首長と教育委員会が協議のうえ教育振興基本計画案を策定する(条例)。
○ 教育委員会設置を自治体の判断とする(維新の会の考え:政権公約「維新八策」)。
⇒ 教育委員会設置を自治体の判断とするためには、地方自治法・地方教育行政法の改正が必要(立法府における対応が必要)。
⇒ 首長が教育行政を担当することについては、属人的な制度となり、首長により教育内容が左右される危険(教育行政の不安定化)がある。


自民党の考え
○ 冷戦を反映し、教育行政の政治的対立が激しかった時代には、教育委員会制度により、政治的中立性を図る意義があった。
⇒ 今日の政策決定や行政運営における、首長や地方議会の役割の高まりに必ずしも対応できておらず、改革の必要性は高い。

○ ただし、首長を中心とした教育行政の権限の再編成については、慎重な検討が必要。
⇒ 住民の直接選挙で選出され、住民代表の正統性を持つ首長が、教育政策や教育行政運営に、どこまで関与すべきか。関与すべきであれば、どこまで権限を持つべきなのか。

○ まずは、形骸化している教育委員会を、本来の職責を果たせるよう改革する。
現在、教育委員会は、必ずしも組織として十分に機能し、国民の期待に応えているとは言えない。その存在意義を原点に立ち返って見直すとともに、教育委員会の閉鎖性、形式主義、責任感のなさ、危機管理能力の不足、委員の高齢化、名誉職化といった弊害を取り除かなければならない。
教育委員会の問題解決能力が問われている。教育委員会は、地域の教育に全責任を負う機関として、その役割を認識し、透明度を高め、説明責任を果たしつつ、住民や議会による検証を受ける必要がある。その具体策として、
⇒ 情報公開、住民・議会による検証、小規模市町村教育委員会の広域化。
(参考)人口5万人以上の市町村教育委員会数:0555
(参考)人口5万人未満の市町村教育委員会数:1240
⇒ 広域人事の担保と市町村教育委員会への人事権の委譲。
⇒ 教育長を首長の直接任命とする(現在は教育委員会の任命)。

⇒ 政令指定都市(人口50万人以上。概ね人口80万人〜100万人以上:20市(※))については、人事権を委譲済みであり、中核市(人口30万人以上:41市)に対する人事権の移譲について検討する(大阪都構想との関連。現行制度では、中核市には、人事権のうち研修に関する実施義務のみが委譲されている)。
※ 平成24年4月1日に熊本市が指定都市に移行したため、20市となった。

○ 国は、教育委員会のあるべき姿についての基準や指針を示すとともに、教育委員会の外部評価制度を導入し、外部の委員による評価委員会を都道府県・市町村段階に置くことについて検討する。
また、国(又は国の独立行政法人)が各都道府県・政令指定都市の評価委員会の活動を評価し、国(又は国の独立行政法人)や評価委員会が教育委員会に対し勧告権等を持つこととすることについて検討する。


(参考)市町村立小・中学校の教職員の任命権(人事権)の
委譲のイメージ図
現行の人事権者
改 正 案
都道府県(給与費の2/3負担) 都道府県(給与費負担なし)
政令指定都市(給与費負担なし) 政令指定都市(同上)
中核市(同上)
※ 人事権の委譲に際して、義務教育費国庫負担金(教職員の給与費)については、全額(100%)国が責任を持つという考えに立つ(「3.国における責任体制の確立及び行財政システムの検討」参照)。


3.国における責任体制の確立及び行財政システムの検討

現 状
○ 義務教育の中心的な担い手は、法制度上は市町村であるが、国は、教育の機会均等保障や適正な教育水準の維持・向上という要請から最低保障の責務を負う。都道府県も域内の調整や格差を是正する役割を期待される。このため、国・都道府県・市町村の間に複雑な仕組みと権利関係が存在する。
⇒ 公立義務教育諸学校の教職員の身分は市町村職員で服務監督権も市町村にあるが、採用・任免などの人事は都道府県が行い、給与は国が3分の1、都道府県が3分の2を負担している(市町村は負担しない)。
⇒ 市町村が学校運営費と学校施設費、都道府県が教職員人件費を中心に負担し、国が都道府県と市町村の負担軽減を補助している。

○ 国、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、校長の、どの者が義務教育における最終的な責任を担うのかが不明確であり、無責任体制を生じている。

○ 地方教育行政法(第49条)の文部科学大臣による是正要求は、要件が厳しく、発動が困難。是正指示(第50条)は、さらに要件が加重されており、発動は極めて困難(参考法令8・9ページ)。
⇒ 第50条については、いじめ事件を端緒として規定されたものであるが、「児童、生徒等の生命又は身体の保護のため、緊急の必要があるとき」を国が認定するのは、実質的に不可能。

○ 是正要求を行っても強制力がなく、実効性に乏しい(上記の件とあわせて、沖縄県八重山地区の教科書採択をめぐる問題でも明らか)。



自民党の考え
○ 義務教育における権限配分のあり方(行財政システム)について検討する。
⇒ 地方の実情・民意に応じて、教育行政を迅速・効率的に運営できるような仕組みとするため、国と地方や、地方教育行政における権限配分の仕組みを再検討する。新たに、できるだけ市町村教育委員会に権限を移譲する。
⇒ 教育委員会制度(組織・運営)や義務教育費国庫負担金(財政)、県費負担教職員制度(人事・採用)は密接に関連しあっており、総合的な検討が必要。
⇒ 上記の検討を行う際、義務教育費国庫負担金については、全額(100%)国が責任を持つという考えに立つ(参考法令9ページ)。

○ 地方分権を推進するうえで、地方自治の精神を尊重しつつ、義務教育において自治体の教育行政に違法があった際は、国が責任を持って是正することを可能とする。
⇒ 文部科学大臣が責任を持って教育現場を正常化するために、是正要求・是正指示の要件を見直して是正命令とし、強制力を付与する。
⇒ このため、地方自治法における、地方公共団体に対する国の関与のあり方の原則について、検討を行う。
(参考)
国の関与については、地方自治法で基本類型が規定されている。
自治事務については、原則として国の関与は「是正の要求」が最も強いものとされ、「指示」については一定の場合に限定して個別法で規定されている(地方教育行政法 第50条もその一例)。
法定受託事務については、是正の指示、代執行など、自治事務に比べて国の強い関与が認められている。


4.教育現場の正常化(新教育三法)

自民党の考え
○「教育公務員特例法」の改正(策定済み)
国会提出済み。衆議院文部科学委員会にて継続審議中。
(内容)
教育公務員の政治的行為については、第18条第1項により、「当分の間、地方公務員法第36条の規定に関わらず国家公務員の例による」、即ち、国家公務員と同様に厳しく制限されている。ただし第2項により、違反した場合の刑事罰については適用がなく、行政処分しか行えない。
これにより抑止効果が著しく失われ、現在も日教組による違法な政治活動・選挙活動が組織的に行われている事は、北教組や山教組の事件などからも明らかである。従って、第18条第1項から「当分の間」を削除し、第2項で罰則規定を新設する。

○「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」(中確法)の改正(策定済み)
平成22年6月に参議院に提出するも、審議未了、廃案。
(内容)
中確法では、処罰請求権者が極めて限定されているため、一度も適用された事がない。従って、法律を臨時措置法から恒久法に改めるとともに、処罰請求権者に対して法に該当する事実の通報を受けた際に調査義務を課すなど、本来の効果を発揮させるための改正を行う。

○「地方公務員法」の改正(検討中)
(内容)
登録職員団体に対し、収支報告書の提出及び公開を義務付ける。
登録職員団体が公職選挙法や政治資金規正法などの法令の違反行為を行った際に、指導・監督などを経ても是正が図られない場合に、人事委員会への職員団体としての登録を取り消すことが出来るようにする。