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21世紀に生きる日本人のための浄土思想を求めて  500W
  
21世紀に生きる日本人のための浄土思想を求めて [単行本]
上橋 泉 (著)

 先日、刊行された「21世紀に生きる日本人のための浄土思想を求めて」の書評を書いてみようと思います。
 著者は元外交官で現在は市議会議員の上橋泉さん。学生時代は「優生保護法改正運動」に参加されたとのことです。のちに、ダートマス大学に留学した際に、米国で盛り上がっていたプロライフ運動(生命尊重運動)に参画されたとか。このように日米両方の堕胎反対運動に参画された貴重な経験を持たれる方です。
 さて、著者である上橋さんは、冒頭で、福島の被災者を自治体が受け入れた際に、なぜ、東北地方がこのような震災にあったのかを考えます。

 「石原慎太郎氏が津波は天罰だ」という発言をし、米国でもグレン・ベックが「津波は神からのメッセージだ」と発言しました。上橋さんは、今回の天災を宗教的な概念で把握しようとします。すなわち、戦後日本が「神仏を信じない社会」になってしまったことと関係があるのではないかと考えます。
 ちなみに、上記の2発言は、天災と神を結びつけていることから、大きな批判を呼びました。災害と神仏を結びつけることは、一種のタブーのようです。

 この書籍の中でも、上橋さんは「公明党ですら宗教的な発言をしない」と指摘して、政治家が宗教的な発言をするのがタブーとなっている現状を憂います。したがって上橋さんも宗教的な発言をすることに関しては、細心の注意が必要であると認識したうえで、一定の結論に到達します。

 それは「今回の天災が、日本人の戦後に行われた中絶という罪の結果として発生したものではないか」という上橋さんなりの仮説です。さて、読者である私が調べると、都道府県ごとの中絶率が出て来ました。
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/03/hyou5.html
 福島も岩手も宮城も、中絶率がかなり高い。ちなみに私が生育した奈良県は、天災がないことで知られますが、全国で最低の中絶率となっています。たしかに、津波も地震もありません。
 たまたまそうなっているのだというのが科学的な理解であると思います。

 しかし、上橋さんは、前世という概念を著書のなかで、説きます。そして日本人が前世を信じなくなったこと、そして唯物論的になってしまったことが、今の日本の惨状を引き起こしているのではないかと憂慮します。

 GHQの二大占領方針は「非武装化」と「人口抑制」でした。
 戦後67年を経て、ようやく憲法9条改正が現実味を帯びて来ました。しかし、その一方で安倍首相を始めとする改憲派は、中絶の問題には取り組んでいません。

 上橋さんは、安倍晋三氏が「赤ちゃんポスト」に関して「育児放棄だ」と発言したことについて、愕然としたということです。私も「赤ちゃんポスト」を素晴らしいと考えるので、残念でなりません。
 おそらく9条改正が実現した所で、移民1000万人受け入れが進展するので、将来の日本は、良くない方向に向かっていると思います。
 移民を受け入れるよりも、赤ちゃんポストを全国に設置して運営するべきでしょう。
 しかし現実には、中絶すると助成金がもらえるという現状があります。

 「今回の天災を契機に生命尊重について日本人が再度確固たる価値観を取り戻すべきである」。これが上橋さんが最も主張したいことと思いました。そして、その指摘は、次世代の日本人を育む現世代の私達にとって非常に重要なことであると思いました。

 著者の独自の視点で、さまざまな提言がなされていますので、ぜひともみなさんも購読されることをおすすめします。

田口圭 拝