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不可解な日銀のなぞに迫る | 500W |
はじめに 御用商人日銀の不思議 ― 物価上昇容認が景気の分かれ目 ― 我々が日頃、毎日使っているお金ですが、誰が発行しているかについては多くの人は知りません。我々国民に通貨を発行しているのは日本銀行なのですが、日本銀行というのはれっきとした民間企業なのです。1千円とか一万円といったお札は「日本銀行券」と印字されています。 つまり私企業である日本銀行が発行する社債あるいは借用書のようなものなのです。 1円から500円までの硬貨は日本政府が製造していますが、政府が直接支払いに使うのではなく日本銀行を経由して流通します。日本経済の好不況の行方の半分は日本銀行の経営陣に委ねられていると言っていいでしょう。 私企業である日本銀行が貨幣の流通を握っているということは、銀行への貸出金利を上げたり、日本中に出回るお金の量を決定する権限を握っているということです。それが日本銀行という摩訶不思議な資本金一億円の私企業なのです。 そういう日本経済の生殺与奪の権限を日本政府から預かっている日本銀行なのですが、世間ではその実態があまり知られていません。私が参加している経済のある勉強会に来た、筑波大学大学院教授で東京大学法学博士、弁護士、経済法が専門と言う人と話した際、彼は日本銀行株式会社だと言い張りました。しかし日本銀行のホームページには 〈 日本銀行の概要 : 日本銀行はわ が国唯一の中央銀行です。日本銀行は、日本銀行法によりそのあり方が定められている認可法人であり、政府機関や株式会社ではありません 〉 と書いてあります。彼の明らかな誤解なのです。 私が、「よく調べた方が良いですよ」と何度か言うと彼は困惑した表情でしたが、翌月から以降、その勉強会へ来なくなりました。彼の名誉の為に言うと、彼はやはり大変な学識の持ち主で、それなりの人物です。しかし日銀と言うのはそんなエピソードを紹介できるほど意外に世間にその姿が知られていないのです。 日銀が日本国内での通貨発行権を持ち、我々国民の生活を左右するのですから国民が日銀の事をもっと知っていて良いのですが、先程の法学博士のような非常に優秀な人でも初歩的な事を知らないことがあるという現実があります。 そしてその日本銀行が日本人の幸せの為に業務をこなしているのかというと甚だ疑問を感じることがしばしばです。日銀は、昔でいう御用商人のような存在で、権力によって庇護されて様々な特権を持つ企業なのです。我々国民はもっと、もっと日銀の正体を知って、日銀の経営陣のやってる事にもっと、もっと関心を向けるべきでしょう。 日本国民だけでなく、日本に在住して日本でビジネスをしている各国の人々にとっても日銀の政策次第でビジネス環境がガラッと変わってしまったりします。日本でビジネスを行っている人々は永年の間、日本経済になにか今一つ物足りなさを感じてこらて来たのではないでしょうか。「もっと景気が良くなるはずなのに」という思いです。前政府の発表では安定成長なので、これで良し、という事でしたが、一方で経済苦を原因にした人を多く含む、年間自殺者3万人という数字が定着しています。 そして、日本経済が“安定成長”と称して低成長のまま停滞している間に、概ね日本全体の所得と言える「国内総生産」で中国に抜かれました。一人当たりのGDPもかつては世界でトップクラスだったのが今は17位。それも2008年からの円高が順位上げに寄与しての数字。何かが間違っている。そう言わざるを得ません。その“何か”というのは端的に言うと、物価上昇撲滅思考です。それこそが、日本経済を長期にわたって低迷させた元凶なのです。 1972年6月に田中角栄氏の日本列島改造論が出版され、翌7月に田中内閣成立、1973年中東戦争勃発で1974年からもの凄い物価上昇が始まり狂乱物価と呼ばれました。 手元の当時の記録だと23%もの消費者物価でした。 日本の物価上昇は凄かったのですが、凄かったのは日本だけではなく、世界中が凄まじいインフレになったのです。インフレの極端な昂進は各国経済政策を混乱させ、インフレ対策は金融、財政の政策を総動員しての抑制となりました。その時点では仕方なかったと思います。そして、結果として経済成長は停滞ないしは減少となりました。 そこで言われ始めたのが「ケインズは死んだ」という言葉です。 しかしそれもまた極論なのです。ケインズの言う「政府が民間に積極的に介入して景気対策を行なえ」という主張が間違っていたのではなく、当時の経済政策が狼狽して間違っていたのです。しかし、経済に政治が介入するケインズ政策を嫌う新古典派の勢力が、ここぞとばかりにケインズ反対のキャンペーンを開始したのです。彼らは財政政策によって経済がコントロールされることを嫌い、政治の介入を招かずに自分たちで経済を操りたいのです。 そのため、世界はインフレ撲滅論、ケインズ政策否定論へと急速に傾いたのです。しかし、インフレ撲滅論、ケインズ政策否定論の二つが、後々の世界各国の経済政策を歪んだものにして行きました。 インフレは、基本的には売れすぎて生産が間に合わないと起きますから、景気を冷やして売れなくすれば物価上昇は収まります。財政政策を主張するケインズ政策を否定することは、正に景気を冷やすことなのです。その結果、物価も上がり難くなります。 世界中がそういう流れになったのですが、一番真面目にインフレ撲滅論、ケインズ政策否定論を実行したのが、日本です。日本人は真面目で何をやっても一生懸命やりますから、それで物価抑制、景気停滞で一番“成果”を上げてしまったのが日本の悲劇なのです。物価上昇撲滅論こそ、日本経済を潰してきた最大の元凶でした。 もし日本の経済政策当局が頭を切り替えて、インフレ撲滅論、ケインズ政策否定論から脱却できれば、たちどころに日本経済は成長路線に乗ることでしょう。 目 次 はじめに 御用商人日銀の不思議 ― 物価上昇容認が景気の分かれ目 ― … …2 第一章 経済は財政政策と金融政策の二本柱 財政政策と金融政策はしばしば違う方向を向く … …………………20 日銀という障害 … ………………………………………………………………………20 国内通貨を牛耳る御用商人 … …………………………………………………………22 政府意向を無視する日銀 … ……………………………………………………………26 社員総会の監視を受けない日銀 … ……………………………………………………29 物価安定というまやかし … ……………………………………………………………30 日本経済を潰し続けて来た日銀 … ……………………………………35 輸出主導の経済成長時代 … ……………………………………………………………35 プラザ合意とバブル崩壊 … ……………………………………………………………36 アメリカ住宅ネズミ講の教訓 … ………………………………………………………38 バブル潰しで誰が得をしたか … ………………………………………………………40 日本経済の失われた40年 … ……………………………………………………………41 第二章 景気停滞の責任は日銀にある 日本経済全体のコントロールは誰がする? … ……………………… 44 最大出資者の日本政府は日銀に介入できない … ……………………………………44 当座預金に利子をつける日銀の不可解……………………………………………… 47 外国の経済侵略に犯された続けた日本と日銀の有り様 … …………………………48 ゼロ以下物価上昇という馬鹿げた目標 … ……………………………53 日銀法は日銀が政府政策に従うよう明記 … …………………………………………53 日銀法を曲解しゼロ以下物価上昇を政策目標に … …………………………………54 ゼロ以下物価上昇は物価の安定に非ず … ……………………………………………55 第三章 日銀法を改正せよ 日銀ルールは根拠なき景気潰しの手段 … ……………………………60 国債発行での財政破綻が有り得ない現在の日米経済 … ……………………………60 根拠のない不可解な日銀ルール … ……………………………………………………63 日本経済潰しの手法 … …………………………………………………………………65 日銀ルールを作った速水優 … …………………………………………………………66 日銀には罰則規定が必要 … ……………………………………………68 日本経済を停滞させてもお咎めなし … ………………………………………………68 デフレが社会に与えるダメージ … ……………………………………………………69 いま日本国内に出回る金の量は多すぎる … …………………………………………71 日銀政策を変えさせるには日銀法改正が必要 … ……………………………………73 第四章 ゼロ以下物価上昇は誰のためか 金融で生活する不労所得階級が得をする … ………………………… 76 消費者物価を探しにくい日銀ホームページ … ………………………………………76 「利上げは織り込み済み」という意味 ………………………………………………79 日銀は物価安定の落第生……………………………………………………………… 80 格差社会を維持する日銀政策 … ………………………………………………………82 ハイパーインフレ論の嘘 … ……………………………………………85 大衆にカネ余り感がないのはおカネが偏在しているから … ……………………85 お金が偏在するもう一つの理由 … ……………………………………………………86 個人情報は筒抜けで個人の借り入れは監視される … ………………………………89 在日米国商工会議所からの提言 … ……………………………………………………90 第五章 外国を利する日銀 小泉内閣によるアメリカへの莫大な支援 … …………………………96 ブッシュの対イラク戦争 … ……………………………………………………………96 イラク戦争後の素早いアメリカゼネコンの動き … …………………………………97 ブッシュの戦争に莫大な支援をした小泉政権時 … …………………………………98 小泉政権はどうやってアメリカの戦費を調達したのか … …………………………100 リーマン・ショックも日本が尻拭い … ………………………………108 リーマン・ショックはブッシュの住宅ネズミ講から始まった … …………………108 外貨準備を国際金融資本の尻拭いに利用されそうだった危ない議連 … …………110 混乱を拡大させたアメリカの格付け会社 … …………………………………………111 リーマン・ショックで日銀に集まった外国銀行資金 … ……………………………112 外国銀行資金につけるべきでない利子を払う日銀 … ………………………………114 第六章 資産格差拡大社会への道 バブルは何故起きたのか … ……………………………………………120 バブル経済は日米の間違った政策が組み合わさった結果…………………………120 アメリカの主張する不公平な「公正な貿易」……………………………………… 122 有り余ったお金が地価を押し上げても日銀は放置 … ………………………………124 バブル後の地獄 … ………………………………………………………126 突然の地価抑制で土地本位性の日本経済は阿鼻叫喚 … ……………………………126 地価下落とともに始まった格差拡大政策 … …………………………………………127 消費抑制と貨幣供給増加で痛めつけられる国民 … …………………………………128 第七章 日本経済は外国資本の草刈場 日銀政策は外資の戦略に多大の寄与をする結果に … ………………134 デフレを肯定する精神性 … ……………………………………………………………134 最悪だった小泉経済政策 … ……………………………………………………………136 長期視点に立たず世界経済悪化を望む人々 … ………………………………………139 政府の景気浮揚策を破壊し続けた「独立性」主張の日本銀行 … …………………141 本当はもっと豊かになれる日本 … ……………………………………………………142 過剰な海外マネーが集まれば迷惑な円高となる … …………………145 侵略者に喰いものにされても、それでも強い日本経済 … …………………………145 大手マスコミは既に深く浸食されている … …………………………………………146 金ドル交換停止が国際経済に革命的恩恵をもたらした … …………………………149 リーマン・ショックの尻拭いに日銀が寄与 … ………………………………………152 円とドルは安全な逃避通貨 … …………………………………………………………154 インフレ恐怖論に経済学未発展時代を持ち出すのは姑息 … ………………………155 第八章 政府役割に干渉し出した日銀 財務省と日銀の役割分担破壊は日本乗っ取りの布石か? … ……… 160 森元首相は大石蔵助だったのか? … ………………………………………………… 160 権力中枢は財務省主計局から経済財政諮問会議へ … ………………………………162 弱体化させられる財務省 … ……………………………………………………………164 政府の産業政策に手を伸ばす日銀 … …………………………………………………165 日本政策投資銀行の民営化 … …………………………………………………………167 増資によって日銀が乗っ取られる悪夢 … ……………………………171 政府出資は55%ではなくたった5500万円 … ……………………………………171 日銀の不透明性 … ………………………………………………………………………173 出資比率が変われば日本文化破壊もあり得る … ……………………………………175 外国勢に警戒を忘れるな … ……………………………………………………………176 第九章 政府貨幣発行が日本を救う 中央銀行の通貨発行権の源泉は政府の信用力 … ……………………180 通貨発行権は政府と私企業のどちらが保有すべきか? … …………………………180 金融マフィアの通貨発行権陰謀論 … …………………………………………………182 ハザール系ユダヤ人の金融の歴史 … …………………………………………………184 日本が最も豊かだった時代は終わった … ……………………………………………187 政府貨幣は奇策でも手品でもない … …………………………………191 通貨発行権は根源的には政府にあるべきもの … ……………………………………191 政府貨幣発行に抵抗する勢力 … ………………………………………………………192 政府貨幣発行のメリットは極めて大きい … …………………………………………194 政府貨幣は現行の法律で増発できる … ………………………………………………196 民主党は日本経済をぶっ壊した小泉政策以上の破壊者 … …………………………198 第十章 アベノミクスと日本銀行 小泉から民主党へと続いた新自由主義政策の終わり … ……………202 レーガノミクスの無残な失敗と日本へのしわ寄せ … ………………………………202 円高是正は貿易収支を改善する … ……………………………………………………204 民主党の失敗が残したツケ … …………………………………………………………205 アベノミクスは需要喚起政策で景気上昇と翌年の税収増で大成功の可能性大 …207 赤字国債ではなく建設国債という政策 … ……………………………………………209 日銀に強気な安倍政権への期待 … ……………………………………………………211 安倍政権と小泉政権の違い … …………………………………………………………213 あとがき … ………………………………………………………………216 |
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