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| 意見書（H26-9-25） | ||
| 平成２６年（ワ）第９８２５号 安倍首相靖國参拝違憲確認等請求事件 原告 関千枝子 外２７２名 被告 安倍晋三 外２名 補助参加申立人 中村重行 外１４名 意見の要旨 平成２６年９月２５日 東京地方裁判所民事６部合議Ａ係 御中 補助参加申立人ら訴訟代理人 弁護士 德 永 信 一 申立人らは頭書事件の第１回口頭弁論期日において原告らの長時間に渡る意見陳述に引き続き、要旨意見を陳述する予定をしていたが、裁判所の些か公平に悖る訴訟指揮によってその機会を逸した。そのことを記録に止めるべく、本書を提出し、次回期日における意見陳述の機会に備えることとする。 記 １ 今回、補助参加を申し立てた申立人の方々は、わたしたちの靖國神社を被告とする、この訴訟が提起されたことに対して強い怒りを、そして生涯続くことになる静かな哀しみと憐れみを抱いています。そしてそのことが申立人らを今回の補助参加という義挙に駆り立てた理由です。 ２ 代理人を含め、わたしたちには、原告の方々がなぜ、靖國神社を被告席に座らせるような暴挙に踏み切ったのかを理解することができません。訴状の内容（在韓原告の意見陳述を併せ、それは原告ら独自の歴史観が織りなす奇形の靖國神社観であり、そのカルト的教説ともいうべきイデオロギー過剰の「意味づけ」には、多くの国民が違和感を覚え、その独り善がりに首を傾げることでしょう。）を吟味しても、靖國神社を被告にする理由はさっぱりわかりませんでした。靖國神社は、単に、首相である安倍晋三の参拝を受け入れただけです。お参りに来られる崇敬者の受入れは、宗教法人である靖國神社がなすべき本来的な儀礼であり、その宗教的活動の中心です。靖國神社が安倍総理の参拝受入れに「人払い」等の特別扱いをしたことを云々していますが、これも国家を代表する人物を迎え入れる側が配慮すべき当然の社会的儀礼の範囲のことです。これをもって不法行為への積極的加担の証拠とは恐れ入ります。 ３ 思い起こせば、１３年前、当時の小泉首相が靖國神社に参拝したときにも、この東京地裁に数百人単位の原告を擁する違憲訴訟が提起されました。その請求は、参拝差止め、損害賠償、違憲確認でした。今回の裁判の請求と同じです。そして原告全員が完全敗訴する結果に終わりましたが、そのときも靖國神社は被告にされていませんでした。わたしたちと異なる信条を有する原告の方々に裁判をするなとはいいません。どうぞ日本国が誇る自由と人権を享受して下さい。しかし共存に必要な儀礼は守るべきです。首相参拝の違憲をアピールすることが目的であれば、靖國神社に対する裁判は不要ではありませんか。靖國神社を被告に加える目的は、靖國神社を被告席に座らせ、さらし者にして辱め、自らの偏った政治信条を宣伝することを目的にする不当なものであるといわざるをえません。 4 訴状によれば、原告の方々は、「宗教的人格権」と「平和的生存権」というものを被侵害利益の中心に置いておられるようです。「宗教的人格権」なるものは、既に山口県自衛官合祀違憲訴訟における最高裁の大法廷判決においても、数々の小泉参拝訴訟においても、その権利性は完全に否定されています。それは信仰や思想信条といった個々人の「内面」や「内心のあり方」に関わるものですが、同時に他者の信仰や信条に基づく行為の排斥や禁止を要請するものだからです。首相が靖國神社に参拝し、英霊に敬意を捧げることを心から願ってやまない申立人らの内面の静穏が、すなわち、申立人らの「宗教的人格権」が、この裁判の提起によってどれほど掻き乱されているかを想像してみて下さい。「宗教的人格権」を前面に押し立てるこの裁判は、政教分離原則が求めている宗教的寛容の原則に自ら反する不寛容で独善の裁判なのだといわざるをえません。 5 今回の裁判が小泉参拝訴訟と違っているのは、「平和的生存権」なる権利が押し立てられていることです。それは日本国憲法の前文に「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあることを根拠とするものですが、それを護ることこそは、全世界にある国家の存在理由であり、基本的役割です。内閣総理大臣は、わが国を他国の侵略から護る自衛隊の最高司令官です。その総理大臣が護国のために散華した英霊に敬意を捧げないようであれば、誰が命懸けで国を護るでしょうか。虎視眈々と侵略の機会を窺っている外国の軍隊からは、最高司令官が英霊に敬意を示さない自衛隊はどのように映るでしょうか。私たちは、戦争の勃発を「抑止」し、私たち日本国民の「平和的生存権」を護るためにも総理が靖國神社に参拝することが絶対的に必要だと確信しています。 ところが原告の方々は、首相の靖國神社参拝を「戦争の準備行為」だと決めつけて揶揄しています。私たちには愚かな政治的妄想だとしか見えない主張ですが、その正しさを訴えるのであれば、世論の喚起や国会を中心とする政治部門の民主的過程においてなすべきであり、司法権力を有する裁判官に訴えるというのは御門違いです。過去の事実や文脈を無視した独善の歴史観を法廷で滔々と披瀝するのも詮ないことです。訴状では、いかにも国民の多数やアジア諸国がこぞって靖國参拝を非難しているかのような情報操作に努めていますが、中・韓・北朝鮮を除くアジア諸国、そして日本人の大多数が靖國神社参拝の意義を理解し歓迎しています。 ６ 今回の補助参加の申立人らは、いずれも靖國神社を崇敬し、英霊への感謝と敬意を自らのアイデンティティの中心に置く方々です。理不尽な理由をもって、靖國神社を被告席に座らせるこの裁判は、私たち日本人の怒りと憎しみをかきたてるヘイトクライムそのものです。繰り返しになりますが、私たちには、なぜ、この裁判によって、わたしたちの靖國神社が被告席に座ることを強いられるかが分かりません。それは、単なる悪ふざけなのか。それとも、靖國神社を大切に思う日本人に対する嘲笑と挑戦なのか。はたまた、誤った怒りによる感情的暴発なのか。わたしたちには、さっぱりわかりません。そして理不尽な訴えによってわたしたちの国民としてのアイデンティティを汚す行為を見逃すことはできせせん。そしてこの裁判、すなわち、安倍晋三靖國神社参拝違憲訴訟の裁判の「真摯性」を疑わせるものです。 申立人らは、今回の靖國神社に対する訴えが、靖國神社を崇敬し、英霊の静謐と安寧を大切に思っている日本人の全てに対する侮辱であり、揶揄であり、嘲笑であり、正面からの攻撃であり、そして「訴権の濫用」であることを訴えます。原告らは、その過ちに気付き、直ちに靖國神社に対する訴訟を取り下げるべきです。それがなされない場合、裁判所は、速やかに、これを却下すべきです。 ７ 最後に、第１回口頭弁論期日における原告らの意見陳述等を踏まえ、前述してきた靖國神社に対する請求だけでなく、国及び安倍晋三に対する請求を含む今回の訴え全体についても真摯性に対する疑問があることについて付言します。わたしたちは、原告らの意見陳述等を聞いていて、敢えて敗訴必至の訴訟を提起する原告らの目的がどこにあるかについて理解するところがありました。原告らが称揚してやまない傍論違憲判断の獲得です。訴状において繰り返し言及されていた小泉参拝訴訟における福岡地裁亀川清長裁判長判決、大阪高裁大谷正治裁判長判決がそれです。いずれも「宗教的人格権」等の権利性を否定し、原告らを敗訴させた判決でしたが、敢えて傍論として違憲判断を行ったものです。結論と理由が齟齬するという意味で「捩れ判決」といわれ、不要だという意味で「蛇足判決」といわれますが、傍論での憲法判断は、司法権の行使とはいえず、判例としての先例性も拘束性もありません。司法の違憲判断が続いているという原告らの宣伝は明白な誤りです。そればかりか、具体的事件の解決を離れて不要な憲法判断をおこなったという点でブランダイスルール第４準則及び第７準則に違反するものです。 ブランダイスの憲法判断回避ルールは米国流の付随違憲審査制を採る我が国においても妥当する法理であることは選挙無効請求事件に係る最高裁平成２６年７月９日決定の千葉勝美裁判官補足意見が前提としているところです（戊第１号証。なお、同意見は、「このような処理〔代理人注：傍論での違憲判断〕は、上訴審による審査を受ける余地のない形で下級審において憲法判断がされるという点でも、違憲立法審査権の行使の在り方としてその当否が問題となるものといえよう。」と述べています）。これに違反してなされた違憲判断は、司法権の逸脱であり、判決という公権力行使の場を借りてする裁判官の個人的信条の宣伝でしかありません。 そして、特に留意すべきことは、このような違憲判断が最高裁によって否定されることなく残っているのは、敗訴した側の上告権放棄による結果だということです。憲法８１条が最高裁判所に憲法解釈権限を賦与した趣旨を併せ考えるとき、下級審による傍論の憲法判断である亀川判決や大谷判決が、あたかも違憲判例であるかのごとく政治利用されている状況は、まさしく憲法が忌避する事態といえましょう。 請求棄却の判決における傍論の違憲判断を実質的勝訴だと宣伝し、敢えて最高裁に上告しなかったために生き残っている「蛇足」の「捩れ違憲判断」。これを称揚する原告らの本件訴訟において求めている目的が適法な司法判断による紛争解決ではなく、それを逸脱した違法な傍論による違憲判断の獲得による政治宣伝にあることは明らかです（なお、念の為、違憲判断はあっても合憲判断はないという主張が間違っていることについては、小泉参拝を「純然たる私的行為」だと断じた東京高裁平成１７年９月２９日判決は明確な合憲判断であり、最高裁でも是認されていることを指摘しておきます）。 本件訴訟の目的が不当なものであって「真摯性」を欠くことは益々もって明らかです。それはまさしく「訴権の濫用」であり、直ちに却下されるべき違法な訴えなのです。 以上 平成２６年（ワ）第９８２５号 安倍首相靖國参拝違憲確認等請求事件 原告 関千枝子 外２７２名 被告 安倍晋三 外２名 補助参加申立人 中村重行 外１４名 上申書 （意見の要旨の補充訂正） 平成２６年９月３０日 東京地方裁判所民事６部合議Ａ係 御中 補助参加申立人ら訴訟代理人 弁護士 德 永 信 一 平成２６年９月２５日付け「意見の要旨」の第７項には、千葉勝美裁判官による補足意見に言及したくだりがあるが、「補足」とすべきところを「捕捉」とした誤記があったのでこれを訂正し、引用した戊第１号証（最高裁判所第２小法廷平成２６年７月９日決定）を添付する。 併せて、亀川判決（福岡地判平成１６年４月７日）の３日後の毎日新聞には元論説委員・岩見隆男氏の『粗雑すぎる靖国・違憲判決』と題する論文が掲載され、「判決を読んで異様な感じに襲われたのは、首相参拝が〈宗教的活動〉かどうかの核心部分で、裁判官が示した判断の粗雑さと政治的文言の数々である」とする厳しい批判が展開されている。同氏は「戦争を引きずる深刻な難題に、戦後生まれの一裁判官が気負って軽々しい憲法判断を下す。手をたたくのは、靖国問題を外交カードに使う中国と韓国だ。司法の本領は冷静さではなかったか」と結ばれていることを指摘しておく。 なお、毎日新聞に掲載された上記論文は、追って、他の証拠と併せて戊第２号証として提出する予定である。 以上 |
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